お腹一杯宣言
「はい~っ。女神アレクサンドラ様からのお達しだったらしいですね~。ネル様に直接拝謁を許されてぇ~、格別の御厚遇頂いたとのことで、法皇様にお礼にお金を包むようにィ~ぃ……と啓示を下されたらしいです」(あのバカ女神、俗すぎる……)
「そ、それで?」
俺は、からからに乾く口から、唾液を絞り出して呑み込んで、声を出すために湿らせる。
「……教会は俺たちに何をどうしろと?」
この金額を毎年、納めてくれると言うのだ。そこには交換条件が、存在するに違いないと考えるのが普通だろう……。
「あっりませ~ん♪」
――その声は、底抜けに明るかった。
「強いて言えば、虐めないで下さ~い♫ 大人しく、ひっそりと暮らしてくださ~い♪ あと、えぇ~っと……? 何卒、女神アレクサンドラ様に お力添えをぉ……」「まっかせなさい!!」
突然、鼻息も荒くネルは胸をぽいん♪ と叩いて見せる(……おいっ)。
「わぁ~♪ やんや、やんや~っ♫」
虚ろな表情のまま太鼓持ちを買って出て、ぺちぺちぺちん♪ と、しょぼくれた手を打ち鳴らして、雑な合いの手を入れる修道女。
「女神アレクサンドラだっけ? あの子! あの子には優先的にアタシの力をまわしてあげる! あと、あんた! 急いで帰って法皇ちゃん(法皇ちゃん?)に伝えなさい! あんたらの所の信徒の皆に、畑の収穫を準備させるように! 秋の収穫とは別に、近日中にありとあらゆる作物を実らせて収穫をさせてあげる! ああ秋の収穫は、また別だからね? 収穫済ませたら、さっさとまた種を播くのよ? このお金のお礼に今の法皇! 伝説に残したげるわ!」
こうなってしまったら、もう俺には――どうしようも無いのは、いつものこと。
「分かりましたぁ~。では早速、近くに待機させています、伝令に伝えてきますぅ」
「えぇ! 皆様の信頼と安心の――生命を司る白龍ネルは、あなたたちのお腹一杯をお約束するわ!」
(……なんだ、そのキャッチ・コピーは)
「分かりましたぁ。よろしく、お願い致しますねぇ?」




