降って湧いた新居の大豪邸、内覧会
「……それで? あの娘は帰したの?」聞くまでも無いだろうに
「おお」一言、俺がそう伝えると、勿体無い……とでも言いたそうな顔で溜息をつく。
「なぁんで……アタシに、ちょっかいをかけて来た……。いけ好かない神の取り巻きを、素直にタダで帰しちゃうのかしらね……」
痛む頭を押さえ、不機嫌そうにネルは、その綺麗な顔の眉間に皺を寄せていた。
「これ以上、面倒なことは御免被る」異を唱えさせない口調で、きっぱりと。
「面倒ごとって?」それでも納得できないと云わんばかりの様子で、ネルは引き摺る構え。
「大体……これ以上、人が増えても――」俺がそこまで口にすると、ネルが言葉を遮り「なんだか寒々しいほど広い、素敵なお屋敷の中にアタシは今ぁ、居るように思うんですけどー?」
返す言葉に詰まって、黙り込むとーーネルは仕方無いと……諦めた顔で腰を上げ
「……まぁ良いわ。折角、デシレアが造ってくれた、新しいお屋敷な訳だし、少し回りましょ?」その提案に乗って、2人で屋敷を見て回ることにした。
* * *
屋敷の内外をネルと2人、見て回ると――。話に聞いていた通りのデシレアの特徴が、屋敷の様子となって散見された。
部屋数67(使用人用に作られたと考えられる部屋を除く)。各部屋のそれぞれに風呂・トイレが付き、3つの大浴場に、大きな食堂、遊戯室や図書室、身体を動かすことができる屋内運動場、トレーニング設備に屋内プール、ダンスフロア、さらには拳銃などのシューティング・レンジ。地下にはワインセラーに大理石の一枚板が見事なバー・カウンター。バルコニーに、屋外には、温室に、庭園に、アーチェリー場。屋根には、太陽光による発電設備までが、目立たないように設置された立派過ぎる物件内容――どう考えても……分不相応過ぎる、……うん。俺の生涯年収何周分だと言った規模の
その上、こちらの人間の目から見れば、設備のどれもが先進的過ぎるもの。
その内装はというと――やはり無生物を除く一切の自然物が、どこにも使用されてはいなかった。




