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視界の片隅にそびえるナニか

 お陰様で――彼女に、そう礼を言おうとしたところで、ふと不安になって、3人が意識を失ったように眠ってしまった理由について訊ねる。


「……えっとね」


 小さな花びらのような下唇に、指をあてて、どう説明したら、俺に分かり易く伝えられるかを思案している様子の義妹。


「硝酸アンモニウムを大体、250℃で、じっくり融解させた際に生まれる化学物質、一酸化二窒素を生成して風上から流したの♪」


 聞いてみたが、さっぱり分からない。彼女たちと一緒に意識を失った際に嗅いだ、甘い香りを思い出し、眠る3人に害は無いのかと聞いてみる。


「……気密された屋内では無かったし。みんな、すっごいタフそうだったから、高濃度に発生させて曝露(ばくろ)させたけど、大丈夫だと思うよ?」


 指で自分の髪を(いじ)り、大して心配もしていない様子。


 そしてデシレアは「おねーちゃんの居るこの領域で、何かあるとは思えないけど……心配だったら、おにーちゃんの指輪で『ボトル』を呼び出して使うと良いんじゃないかな?」 すぐさま踵を返して、納屋で眠る3人の元に向かい、言われた通りにボトルを使って再び外に出る。


「お疲れ様♪ おにーちゃん」


 花のような彼女の笑顔にホッと癒される。緑の宝石を細くしたような、髪の流れに手を置いて、くしゃくしゃと掻き乱す。嬉し気な声が響き渡る。


「ところで……アレ。なに?」


 ふと視界に入って来た――家を囲む木々の目隠しの向こう側にそびえ立つ、一目で分かる豪華な屋敷。


「…………」しばらくの沈黙の後「……やり過ぎちゃった」きまりの悪そうな顔で、目を泳がせ、ぽつりと呟く彼女。


「ツガータ!」背後から騒々しい気配と声「デシレアが凄かったのじゃ!」


 息を切らして真っ直ぐな黒髪を躍らせて、ヴィルマが珍妙な生き物を伴って駆け寄って来る。

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