調伏できません
「……だから、そんなことは、どうでも良いんです!」(おい……女神)。
「問題は貴女のお陰で私が、あの方とコトを構えることになりそうであるのが、問題なのです!」
「で……でも、ア、アレクサンドラ様? かつて……あの邪悪な『竜』を聖鈴で以て説き伏せ、改心させて御覧になられたんです……よね?」
「そんな話! あなたたち信者が、暇を持て余して、尾ひれに背びれを付け足して、勝手に作り上げた、針小棒大のホラ話に決まってるでしょぉぉおぉーっ?!」
女神によって自身の信仰を否定されてしまった修道女メルトゥイユは――もはや魂が抜け落ちたと言わんばかりの表情を見せて、膝を折って女神を仰ぎ見ていた。
「……ねぇ? そちら……終わった?」
イライラとした様子を隠すこともせず、ネルは2人に……いや、1人と一柱に声を掛けた。慌ててネルに駆け寄る、女神アレクサンドラ。
「は! はいっ! お待たせいたしましたぁ~♪ 申し訳ありませンー」(……終わってしまった)
「……なんかさ? あんたたちの話が聞こえて来てたんだけど」
「ど……どんなお話で……しょう……か……」
女神アレクサンドラは、今にも泣き出しそうな表情。
「『邪悪な〝竜〟を聖鈴で以て説き伏せ、改心させて』……ってお話。随分、素敵なお話になってるわよね? ……というか、あの時の……二日酔いで、頭割れそうに痛かったアタシの周りで――リンリンリンリン……リンリンリンリン耳障りな鈴を振り続けてくれてたのは……あんただったの?」
「……そ……その節は……お耳……汚し……を、失礼致しまし……た」
泣き出しそうな顔で俯く女神。そんな女神にネルは突然、優し気な表情を浮かべ?
「あら? そんな顔しないで? 女神なんでしょ? せっかくの綺麗な、お顔が台無しじゃ、みんなに笑われちゃうわよ?」




