蚤の心臓を持つ俺を……ビビらせたな?
「いよおっし! 新記録じゃ! ぴむぴむが30秒も、おやつを我慢してみせおったのじゃ! ぐっぼーいじゃ! ぐっぼーいなのじゃ!」
「よ~っし♪ ぴむぴむ! 今度は40秒の記録を目指すよ! 今度、我慢できたら一気に2枚あげちゃう!」
「ぴっ?!」(……しつけとは名ばかりで、甘やかしてんじゃねぇか)外の様子を耳で聞き、俺は自身の小心さから、無意味に神経をすり減らす、作業へと戻る。
ベークライト製の銃のグリップ・パネルを、有栖川さんが届けてくれた――高級家具のような色合いを見せるオーク材の物と、アイス・アイボリーとかいうマンモスの牙製の物に取り換え、12個のスピード・ローダーに次々とおぼつかない手つきで弾を装填する。
最初は、これらの作業や操作をまるで理解していなかった俺だったが――意外にも、これらの手解きを見かねて買って出てくれたのが、なにを隠そうヴィルマだった。
以前、住んでいたダウンタウンは、近所の男の子たちが「今日、どこのコンビニに行く?」と話し合い、抜き身のリボルバーを片手に握って、出掛ける環境であったらしく――仲の良い男の子に触らせて貰ったことも、空き缶を的に撃たせて貰ったこともあるのだとか……。
……治安が悪くて、防犯ブザー代わりにリボルバーを手に、……男の子たちは出かけていただけなのだと――そう言う話なのだと……思いたい。
ともあれ、ヴィルマの手解きがあったものの――この銃と言う代物。
扱うには恐ろし過ぎて、俺には おっかなびっくりしつつ触るのが、やっと……と言った、情けない有様。
なにせこの「銃弾」と言うもの。
雷管を叩かれるや、バアァン! と爆発して、鉛の粒を飛ばすのだ。
怖ろしくない訳が無い。
なんだか……初めて火を手にした原始人みたいな……。「小学生か」と言うような……。
おバカさんな物言いに聞こえるかも知れないが――これを恐れる理由には、れっきとした訳が存在したりする。
単に俺が……チキンだからと言うだけの事では決してないのだ。




