甘さは、砂糖の22万~30万倍だとか
「ひっ?!」
ここに来て、初めてデシレアは怯えた顔を見せた。この姉のことだ――想像以上に大事な、これらの大量絶滅を、機嫌ひとつで平気でやりかねないと思ったのかも知れない。
(……うぅ~ん。コイツのことだしなぁ……。正直なところ……本気か、ブラフかなんて本当にわからん……。いつも、なに考えて生きてるのか、分からん奴ではある訳で……。いや……しかし、多分。「ヤル」と決めたら……ホントにやるような気もしないでもない……。コイツのことだしなぁ)
そもそも、ネルにとっても何十億年もの間、宝石の中でポーズを取らされることになる、その対抗手段として、その手のプランを用意していたとしても、不思議ではなさそう……ではある。
「あっ♪ でも、あんただったら大丈夫か」
姉の言葉に動揺して震えるデシレアとは、対照的に、ネルは楽しそうな声に、身振り手振りを交え、さらに追い込みにかかる。
「――鉛とかぁサッカリンとかぁ? ラグドゥネームとかぁ? 合成すれば良いだけの話よねぇ? アレ甘いんでしょ? あぁ~ん♬ アタシったらおバカさん♪ 計算、ミィ~ス! 妹にエメラルドの中に閉じ込められて、御仕置されちゃうぅ~ん♡」
(久しぶりに……コイツの三文芝居を見る気がする……イライラする♡)
「な、鉛……サッカリン……ラ、ラグドゥネーム……」
姉の言葉に頭を抱えて、隠しようもないほどに震え始める義妹。
「……ご存知です?」
俺は聞きなれない その言葉について、有栖川さんに訊ねていた。
「鉛は……古代ローマで、酒器に用いられた理由が……醸造技術が、未熟だったワインを甘くすると言うものだったかと、記憶しております……。サッカリンは……御説明の必要は有りませんね? 確かコールタールの研究の過程で発見されたのではなかったでしょうか……化石燃料を生み出せる、お嬢様であれば、合成は可能に思いますが……それ単体では、痺れる様な苦味があると聞きますね。ラグドゥネームの方は……申し訳ありません。存じ上げません」完全に観戦・解説役の――俺たち人類コンビ。




