言い出すとは、思ってた……よ?
「オーサは?」聞くまでも無いことを、わざわざ聞いてしまっていた。
姉から、あれだけ恥ずかしい目に合わせられたのに……。俺なんかと合わせる顔も無いに決まってる。
「オーサ? なんか顔、真っ赤にして帰って行ったわよ?」
(……なんかじゃないだろう。何故、分からん?)
「アタシ、悪くないシィ~。あの子が、なんだかアンタと小難しい話を長々続けてたのが悪いんだしぃ~」
「……つまり、先ほどの仕打ちは、聞かれたくない昔話を……打ち切らせたかったからしてのけた……と。イイ性格してるよな、お前。鬼か……」
「龍でぇ~~~す♪」
「やかましい」
他愛のない、やり取りを交わしつつもネルは、お茶を淹れて、椅子に掛けるように勧めてくれた。
* * *
「……さてと」
一服し終えたところで、ネルは話を切り出す。
「え~、アタシのおっぱいを吸って、一気に若返ってしまって、お困りのアンタ!」
「……あぁ、すっげぇ困ってるよ。どーしたらイイんだよ? あちらじゃ社会生活に不具合出まくりだよ? 多分。車の免許の写真とか、学生証とか、顔認証要求された時とか、困るどころの話じゃねぇよ……。幸い、俺のスマホに顔認証付いてないけどな」
「まぁまぁまぁ♪ 大した問題じゃないから」
さも、つまらない話であるかのように、コチラを手で、パタパタと扇いでみせる彼女。
「じゃあ、早くなんとかしてくれ」お茶を飲み終えた俺が急かすと、ネルは「早くなんとか? できないわよ?」あっさりと。
それはできないことであると、にべも無しに。
「……は?」
「心配しなくても、問題解決の方法はあるのよ? ここに住めばイイのよ」
意外なことに……ネルの言葉に、あまり驚きを覚えなかった──俺がいた。
「なんかね……うん。言い出す……とは思ってた」




