シュレディンガーの……おちんちん
「どうしよう……おねーちゃんに聞いた……おにーちゃんの一晩の最大発射回数に合わせて全部の……銃の……合計装弾数まで決めたのに……」
(アイツは一体、何を吹聴して回ってくれてやがるんだ!)
「これは……ザッハトルテは、また今度……でしょうか?」有栖川さんは、顔に苦笑いを浮かべ、蚊帳の外から、そんなことをぽつり。
(義理の妹が――俺なんかのために一生懸命用意してくれたんだ……。あまりケチをつけるのも良くないな……良くな……い)。
大人の度量として流して見せよう……と、思いはしたが――どーしても理解できないひとつの点が疑問に残る「なんで2丁も作ってくれたんだ?」男のシンボルとしての文字を刻むにしては……だった。
「えっ? えっ? えっ?」自分の予想とは異なる展開に、混乱しているかのように、大きな翡翠色の目に、うっすら涙を溜め始める。
「だ、だって……だって……おちんちんって……2本ついてる……ものなんでしょ?」
デシレアが、側に控える有栖川さんの方を振り向く。確認を取っているようだったが――有栖川さんは、笑い出しそうになるのを必死に堪え、
「……お嬢様が実際に、御自身のその目で確認なさる――その瞬間まで。2つのロマンが存在している……と言うことでよろしいのではないでしょうか?」
――言葉も無い。
「う……うぇ……うぅ……うえぇ……有栖川……このおちんちん……ひっく……要らない。この失敗作……えぅ……100万年……経っても……残り続けちゃうし……どっかに棄ててきて……う、う、う……うえぇえぇぇぇ~ん……」(ひゃ、百万年以上も残り続けるのかよ?!)
執事さんを見ると肩を上げて「困りました」と言う仕草。
俺を喜ばせてくれようと、いささか暴走気味ではあったが、突っ走って見せた――デシレアの頭に手を置いて撫でながらに、彼に目くばせ。
「……ありがとな。これ全部貰って良いのか? 執事さんにお祝いのケーキお願いしよ?」
「直ちに」
俺と主の2人を残して部屋を出て行く間際に、耳打ちする彼。




