義妹の力
「……おにーちゃん。素直に喜んで受け取ってくれないと。……お身内査定のサービス金利を、ウルトラ・ブラック金利に変更しちゃうんだからね?」(どーゆう脅しなんだ……それ)
そうは思ってもネルの可愛らしい、妹の機嫌を損ねるのは躊躇われる。なにせ、本当に債権者様らしい訳で……。
俺はこの申し出を受けて良いものかしばらく悩むと――良く分からないまま、謹んでその御厚意を受けることに決めた。
(御厚意の内容が分からないだけに、なんだか……すっげぇ不安なのは、気のせいだろうか)
* * *
部屋の中央で、目をわずかに伏せ――立ち昇るように瞬き始めた緑の光の中、両腕を開いて宙に浮かび上がる義妹。
見たこともない文字の奔流を前に彼女は、何かを始めた様子。
(……君らが、何かをして見せたからって……別に今更、大して驚きもしないけどさ)
「――保持バランスと銃身を弾頭が通過する際に発生する振動波形をシミュレート」
「……命中精度と波形を途中で断ち切らない、7.22インチの銃身長を最適と判断」
「反動抑制の為、銃身を回転弾倉下部に。銃身位置の変更に伴い、内部撃発機構をエクスターナル・ハンマーとインターナル・ハンマーに分割。グリップ位置を最適化――」
「〝なでなで〟により取得したデータを元に、グリップのフィンガー・グルーブ形状を最適化――」
俺には理解不能な言葉が……
怒涛のようにデシレアの口から紡ぎ出される。魔法の呪文だと言われても、あまり違いは無い。……が、どうやら聞く範囲で判断するに、随分、工業的な単語が飛び出す辺り――違うのか。
「――回転弾倉の解放方式は、トップ・ブレイクを選択」
「――使用弾丸には、認識呼称〝おにーちゃん〟が、属す世界における流通とマズル・エナジー、臨床データ量を考慮」
「.357マグナム弾が最適と判断――採用」




