義妹に攫われちゃった……
鮮やかな若草色に、手の込んだレースが、あしらわれた彼女のドレスと、髪の色を目にして――考える(オーサは兎も角、ネルには全く当て嵌まらないだけに、どうなのかは分からないけども……)
ネルやオーサが、やって見せるように――そんな俺の考えを、同じく読み取ってみせたデシレアは「うぅうん」と、かぶりを振って「おにーちゃんが考えている通りだよ? わたしねぇ~? 最も古き六の大龍の一頭にして、遍く全ての大地を司る緑龍だよ♪」そう肯定した。
龍であると言う彼女を前にして、緊張感を漂わせる手練れのオークの彼女たちを余所に――花のような無邪気な笑顔を、デシレアは振りまいて見せる。
「でも一体、どうしたってのよ……あんた? 遊びに来るなら教えなさいよね。ご飯は食べたの? アタシたちは、もう食べちゃったわよ? 何か作る?」
(……妹相手に、ちゃんとお姉ちゃんをしてる)オーサの時とは、まるで違う対応に俺は、少し……感心してしまっていた。
「んー? 用事があったから来ただけ。気にしなくて良いよ? おねーちゃん」俺や、ネルの様子を気にするでもなく。
「用? なんかあったの?」首を傾げ、頬に手を当て、ネルは妹の顔を窺い――この小さなお客様の、我が家への来訪理由についてを考え込んでいる様子。
その表情を見るなり「だと思った!」と、デシレアは頬を膨らませてみせ、可愛らしい眉を吊り上げる。
「おねーちゃん! 貸したお金! 利息の振り込みも、もうずっと! されてないよ!」
その剣幕にネルが凍り付く。
姉の様子に全てを察したのか……深い溜息を吐き出す義妹。
「どうして……おねーちゃんて、いつもそんな……かなぁ。……じゃあ。利息の振り込みが済むまでの間。……おにーちゃんを差し押さえさせて貰うからね? 振り込みは、いつも通り わたしの銀行にお願いね? それじゃ……お邪魔しました」
デシレアは皆に向かって摘んだスカートの裾を拡げて、丁寧にお辞儀をして見せると――「俺を伴って」その場から姿を消した。




