水清過ぎて
「……運営が、上手く行かないんです」
メルトゥイユは唇を噛みしめ、悔し気に現状を説明してくれた。
「なんとなくではあるけど……理由は分かる……よ?」俺がそう返すと、彼女は
「ほ、本当ですか?!」
まるで救いの主にでも、すがり付くかのように席を立ち、俺の横にやって来ると(……近い近い)
手を握り締めて、訴えかけて来る「……なにが……問題だったのでしょう……」
「……う~ん」悩むまでもなく、おおよその理由は想像がつく。
けれども……だからといって、それが解決できる問題かと言うと……。
「一応、聞くけどさ?」確認を取る意味で、メルトゥイユに訊ねてみる「なんでしょう?! なんなりとお聞き下さい!!」握る俺の手に力を込め(『なんなりと』と言われると……邪な考えも、首をもたげないではないけど……)
「聖鈴教会が、ギルドを運営するようになって……変更された規約だったり、変わったことって……どんなことがあるのかな?」
「変更……ですか?」
細いおとがいに指を当て、どこを見るではなく、仰いで……。
「まず建物が変わりました! 酒場併設、おまけに宿だなんて、だらしないにもほどがあります! 本部にお願いしたら即、教会の建設費も下りました♡」(…………)
「……ほ、他には?」はっきり言って……。この時点で既に彼女に、これ以上聞くべきことはなくなってしまっていた。……のだが? 念のために、さらに話を聞いてみることに「……他にですか? ……えぇ~っと……」
「聖鈴教会の教えを取り入れ『弱者の救済』『奉仕』『喜捨』。組合員の相互扶助を目的とした基金のために、受けた依頼の報酬の一割を徴収。祝祭日は、教会に集まっての礼拝の励行。日が沈んでからは、教会に組合員の皆で集まって、女神アレクサンドラ様の有難い教えを学び……楽しく讃美歌を歌って〆っ」
なおも必死に変更が加えられた箇所を律儀に挙げようとする彼女。
「もう……良いよ……。想像した通りだったから……」
「え? よ、よろしいのですか?」さも、驚いた様子で。
「はい。よろしいですとも……」つまりは、想像した通りな訳だ。




