ピンク教会
教会に辿り着くと、まずは――今夜の宿となる部屋にメルトゥイユが、俺たちを案内。
「相部屋で、すみません。あ、一応、神の家ですので部屋は、お二人で『つ・つ・し・ん・で♡』お使い下さいね? ふしだらな事なんてされたら……明日は、朝から懺悔で、銀貨一枚を聖水盤に頂きますよ♪ まぁ、私は寝付きが良い方ですので、気がつかない可能性もありますが♬」
なんかもおぉぉ……なんだか、もおぉぉぉ……。
ここは本当に、神に祈りを捧げる信仰の場なのか? と言った疑問しか湧いてこない。
「では、私は少し外させていただきますね♪」
部屋から出て行く、メルトゥイユを見送り。ふと目をやると、窓際に立つスキュデリが、その大きな身体を縮こまらせて、顔を赤くしてモジモジしていた。
「スキュデリ?」声をかけると「な、なんでもありません! なんでもありません! 大丈夫! 大丈夫です! 大丈夫!」
慌てた様子で……なにやら取り繕う彼女。
「どうした?」おかしな様子のスキュデリが気になり、近寄ってみると「お、御屋形様! だ、だめです! こちらに来られますと! こちらに来られますと!」
必死に腕を振って、抵抗を見せる。
彼女の様子がおかしい理由はすぐに分かった。
窓の外から聞こえる――あられもないピンクな声。
この教会も、辺りの建物も、相当の安普請らしかった。
「……スキュデリ。荷物を纏めろ。まともな宿を探して移ろう」
一刻も早く、こんな邪悪要塞から出て行くべく、スキュデリにそう告げた所で、メルトゥイユがノックの後に扉からひょっこり顔を出す。
「あ、お食事ですけど……どうかされました?」怪訝な表情を見せる彼女。
「悪いけど、宿を移そうかとね。お世話様でした。喜捨は聖水盤に入れとくから」




