オーサは、ウンコ棒を装備した!
「大きくて……豪華なお城だったんだけど……。アンタが死んだ後、仲が良かった領主に買い取って貰っちゃった♪」
『大きなお城だった』と言うことは……俺が想像したイメージからも、あまり外れていなかった訳だ。
「どーしてまた?」
「……お金が必要になりましたもので……つい。今は後悔している。でも、反省はしていない」
ネルはふん反り返り大きな胸を、これ見よがしに鼻息も荒く張ってみせる。
「さ♪ 立ち話もなんだし、中に入りましょ?」
* * *
言われるままに、小屋の中に入ろうとすると、入り口のドアの蝶番が、小さな音を立てて開き、中から1人の少女が姿を見せた。
「お帰りなさい……姉様」
出迎えた少女は、年の頃10代中半くらい。
レースをふんだんに使用した、黒一色の高価そうなドレスを身に纏い、黒く真っすぐなストレートの髪を肩より下まで伸ばし、前髪は真っすぐに切り揃えていた。
その黒い瞳をした少女は、肉感的なネルとは対照的に、外見から見て取れる年齢相応の──どちらかといえば華奢で可憐な印象を受ける。
「ただいまぁ♪ オーサ。他のみんなは?」
大人びた表情を見せる、とても姉妹には見えない少女を問答無用に抱き締める。
「他の姉様方は、もうみんな、それぞれの領域に帰っていったわ……私も、もう帰る」
「みんな勝手ねぇ……アタシが戻って来るまで、待ってくれていても良いのに……」
「あなた以上に、好き勝手に生きている姉様は……他に居ないと思う」
オーサと呼ぶ少女の言葉を聞き流し、ネルは抱きしめていた妹を解放すると、先ほど量販店で妹への土産だと言って俺に買わせた──ウ〇コ型のクッションが、先端に取り付けられたプラスチック棒……正式には、なんと言う商品なのかは分からないが……略して『ウ〇コ棒』を「はい♪ コレお土産♡」と手渡し、留守番を姉たちに押し付けられていた妹を労った。
ぴゅん! ……ぴゅん! ……ぴゅん!
ネルに手渡された『土産』とは名ばかりの(ある意味、土産と言えなくも無いのか)、意味不明な品をオーサは上下に振り──文字通りに持て余しているかのよう。




