盗賊さん逃げてぇーーーっ?!
「ありがと……」邪険にするのも気が引けた俺は、それを腰のベルトに結び付けてから、ヴィルマの頭を撫でた。
「……んじゃ、行って来るわ。残る面子の中では、一番しっかりしてるお前が頼りだ、ヴィルマ。留守は頼むぞ?」
――俺とスキュデリは、プレァリアの街を目指して出発。
* * *
幾人もの男たちの怒声と打突音が辺りに鈍く、響いていた。
道の傍らに腰を下ろし、暇潰しに――腰に下げて来た、ツォンカパに貰った長剣を鞘から抜いて剣身を、ボーーーッっと眺める。
奴との稽古で付いた、いくつもの傷。刃切れが刻み込まれた剣(……貰った時は、もう少し……綺麗だったんだけどな)。
奴に言わせれば『細かい剣の傷を数えてなんの意味がある』ということになるのだろうが……。
頭上が一瞬、翳った――かと思えば、身なりも汚いおっさんが傍に落ちて来る。
おっさんは、時代劇の熟練の悪役商会の方々が見せる、地面に転がってからの、エビ反りに仰け反って見せる動作の後で、ぐったりと動かなくなった(……なんだか……哀れでならない)。
出掛けにヴィルマが手渡してくれた御守、「グリグリ」の効果は覿面。
出発して3時間ほど……だっただろうか? 大荷物を背負っているクセに、走ってプレァリアの街まで行きたがる、スキュデリを必死になだめ、道を歩いていると、行く手を塞ぐ方々が、手に手に物騒な物をチラつかせて――。
「荷物と金目の物、女を置いて行け」と声をかけて来た。盗賊らしい。
(こいつが担いで歩く、荷物の量を見て分からないのか……2tトラックが、のしのし♪ 2本足で歩いている様なモノだろうに……。バカなのか? ……こいつら。それに『女を置いて行け』? あぁ、スキュデリを捕らえて、どっかに売ろうとか、アホなことを考えている訳か……)




