銀貨1枚の値
「……そうですねぇ」何やら、しみじみとスキュデリ。
「船乗りが……洗濯物を任せるために出入りする洗濯女の店に……堂々と汚れ物の山に加えて……腰巻まで、預けて見せたのには……本当に恐れ入りました……」
「あぁ……あったな。そんなこと。……あの後、船乗りの連中が航海の御守にって、クィンヒルデの汚れ物の腰巻をクレって、洗濯女と銀貨一枚で、密かに交渉して、取り合いになってたっけな……」
「……なん……だと?」青い顔して震え始める魔剣の主。
「えぇ……預けるたびに『洗濯に失敗してしまいまして……』と、謝罪される理由と、銀貨の山を渡される理由……お教えするべきかどうか……本当に……本当に……なんて伝えようかと……」
「な、何故、その時……教えてくれなかった、お前たち……」
うわずる声を振り絞り、震えて聞く彼女に2人は。
「なんか毎度……凄い自信満々に汚れ物、店に出してたし……説明するのも……なんか恥ずかしかったしよ」
――どうしようもなかった。といった様子で、2人は目を背け
「まぁ……洗濯に出すたびに、貰った銀貨で真新しい腰巻が買えてたろ? 良かったじゃねぇか」手にしたグラスのワインを啜る。
「お分かり戴けましたか? 百千万億 春夏秋冬さん?」
ネルは、グラスを片手に「こちらのお嬢さんの花嫁修業は、まだその時ではないと、愚考する訳ですよアタシは」持って回った口振りで――
「……花嫁修業は兎も角。せめて……自活できるようには、してあげるべきかも知れんな……仮にも、ひとつの部族を束ねる族長様らしいし」
俺は絶滅危惧種の動物か、何かを見るような目で、彼女のことを見ていたかも知れない。
「……のぉ? ツガータ、ネル……わしは、こちらの言葉はロアに聞いても、大体の感じしか解らんのじゃ……わしに分かる言葉で、話しては貰えんかのぉ……」
つまらなそうに褐色ロリが頬を膨らませる。




