がっかり転移
まばゆい洪水のような光彩も、グラフィック・デザイナーが、開発スケジュールに胃を痛めて、必死に描き上げたような、複雑精緻な魔法陣も発生することも無く……
──転移は終了していた。
「……へ?」
「着いたわよ。アタシたちの『巣』があるシルウェストリスに。お帰りなさい♪」
ここが俺が住んで居た世界と、違う世界であることは──すぐに分かった。
何せ辺りの風景は夜の薄暗い公園の片隅から、明るい陽射しに照らされた、森の中の拓けた場所に変わっていたのだから。
けれども、ここが異なる世界であると、判断できるものはそれだけ。
「……こんなグラフィックに割く、制作カロリーの低いゲームなんかが、あったりしたら……逆に話題になるわ」
「……? どーしたのよ? なに不機嫌になってるのよ? 早く、巣に入るわよ」
そこに建っていたのは、質素な切妻屋根の小屋。
「え? ……巣ってこれ?」
「……あ! なんか期待外れだったみたいなこと、思ってるでしょ?」
「期待外れも何も……」
「言っておくけど、この家って……元々のアタシの住処じゃなくて、こちらで暮らしていた頃のアンタの家だからね?」
目の前の物件は、煙突がひとつあるだけの粗末なもの。
小屋の周りには100平米程の、手入れの行き届いた畑も見える。母屋とほぼ同程度の、床面積の納屋が3つ。家畜小屋が1つ。保存食を作るための燻製小屋と、パン焼きのかまどだろうか? それが1つずつ。トイレらしき設備は外。風呂は……期待できまい。
壁には漆喰が塗られ、屋根には見たことが無い、青みがかかった──薄く剥ぎ取った、自然石のように見える建材が、瓦のように葺かれている。
(なに? アレ……)
「スレートよ。粘板岩とか言って、一定方向に簡単に劈開する石が使われているのよ」自然と湧き出た俺の疑問を『読み取った』ネルが説明をしてくれた。
「ちなみに聞くけれど……元々のお前の住処って、どんな所なんだ? まだあるの?」
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