神を呪っても仕方ないし、朝ご飯にしよう
そして俺は――この時初めて、ネルが確実に人類ではないという身体の変化。瞬膜が一瞬にして、瞼と水平方向に幾度か開閉して形を変え、縦に割れた瞳が表れたのを目にした。
かつて出会ったばかりの頃、コイツの「自身が龍である」という話を聞き「どーせ、その時になってみれば、事実として披露されるに違いない」と妙な諦観を覚えた時のことを思い出し――何故か、笑ってしまっていた。
(……ネル? 目……縦に割れちゃってるぞ)
うしろに3人が居ることを気遣って、頭の中で伝えると、ネルは、小さな悲鳴を上げて、慌てて俺に背を向けてから――少しして、恐る恐る……こちらに顔を向けた「……み、見た?」
いつも通りに戻った瞳に、怯えを浮かべて。
「見た見た……(見たから教えてやったんだろうが……)別にそれは、どーも思わんからさ? 気にするな」本当に今更と言った感じでしかない。
「……ほ、本当に?」(指輪まで嵌めてんのに、解らん訳ないんだろ?)
バツの悪そうな表情を浮かべながらもネルは、とりあえずは、納得した様子。
「ネルぅ~? ツガータは帰って来たのかぁ? 言われた通り鶏さんに、卵を12個産んで貰って来たのじゃ。山羊さんのおっぱいも搾るかー?」家の側で、採卵用の籠を手に――ヴィルマが声を張り上げていた。
どうやら俺が今朝、このオークの娘3人を連れ帰るのは――コイツにとって本当に、大好きな惰眠を貪るのも惜しまれるほどに、愉しみなことだった……のかも知れない。
「まぁ……良いや。ヴィルマが腹減ったって喚き出す前に、……朝飯にするか。話はそれからにしよう」
ネルとの話し合いは、ひとまずそれまでにして――連れ帰った3人を我が家に招き入れると、朝食の支度を始めることにした。
 




