お赤パンって……なんだよ
「いや~ん♡ もう、どうしましょ? 朝から、すっごいサプライズ! お赤パン! 今日は、お赤パン焼くわよ! ハーレム発足のお祝いに♪ あちらで買って来ておいた小豆さん、夜の内に水に浸しておいたのよねぇ♬ さっすがアタシ♪」
心の底から浮かれている様子のネルを前にして――俺は、もはやコイツの考えが……一切、理解出来なくなっていた。
「ネル!」声を荒げて、長年連れ添った――浮かれる彼女の名を呼ぶ「……ど、どうしたのよ?」
きょとんとした表情で、こちらを向いてみせたコイツに……聞かずには、いられなかった。
「お前……本当に、それで良いのかよ? 長く一緒に居たけど……。流石に俺の理解にも限界があるぞ……」
コイツの様子に、眩暈を覚える。
俺は、この連れ帰った3人を理由に……。ネルに泣かれて、殴られるなり、刃物を持ち出されるなりを、覚悟までしたと言うのに――だと、いうのにコイツは……。
「んん?」信じられないことに何を聞かれているのか、解らないといった表情を浮かべて「……ひょっとしてアンタ? アタシが、この娘ら3人を見て……浮気者! みたいな感じで、怒るとでも思ってたの?」
「他にあるのかよ……」もはや、コイツの考えを理解出来ない処の話ではなく、俺は困惑。
「……そうねぇ。一人の伴侶と神の御名の元に、生涯添い遂げて……って、価値観の世界で、アンタは育ったんでしょうから、理解出来ないかも……ね?」
「それはつまり……」俺が思うような形でネルは――俺のことを想ってはくれていなかったのかと、絶望にも似た感情が湧き立とうとした瞬間。
「あ! 違う違う! 違うわよ? 違うわよぉ? アンタが今、考えたの全っ然、違うからね? 話したでしょ? アタシたち龍は、執着が凄いんだから。多分、また……仮にアンタが死んで生まれ変わったとしても、アタシは……アンタの元に現れると思うわよ?」
俺の考えたことを、いつものように読み取り、ネルはそれを即座に否定。
お赤パン:⇨御近所のパン屋さんに実際売られていたりします。




