2階級特進を言い渡されちゃった
背後で2人が、そんなことを話していると。ネルにしては珍しく、こんな朝早くに起き出して――スカートの裾を引っ摘んで、息を切らせて、こちらに向かって駆け寄って来ていた。
(殴られようと、刺されようと、言い訳無用の……この朝帰り……)
指に光る指輪に目をやり、腹を決める俺。疾風のように俺の脇を走り抜け、連れ帰った3人にネルが詰め寄る。
(……? な、なに? ひょっとして『こ、この……どろぼう猫ぉ!』的な展開なのか?! い、いや、それ違うからな?! ネル!?)
慌てて背後を振り返って見れば、予想外も何も――まるで思いもしなかった事に
「んまぁ! まぁ?! まぁ!? すっごい美人さんたちじゃない! 色は黒いけど、エキゾチック! 野生の黒豹さんみたいだわ! がっしりした肩幅も太モモも、長い手足のお陰でバランスが良くて、セクシーで素敵♪ 恵体って奴ね! おまけに出るところは出て、締まるところは、きゅ……っとして♡ スタイルも抜群だし、モデルさんか、マネキンみたい!」大はしゃぎのネルさん。
「……こちらは?」詰め寄られ、居心地悪そうにクィンヒルデが聞いてくる。
「俺の連れ……」
「御内儀がおられたか」その説明に短く、申し訳無さそうな表情を浮かべる彼女。
「……ネル? 話があるんだけど……」
指輪を嵌めた俺と、コイツの間で、あまり必要な事とは思えなかったけれど――あくまで、一方通行の意思疎通。これからのことを考えれば齟齬があっても困るので、事情を説明しようとすると
「……でかした」
くるりとこちらを向いて、鼻息も荒く、俺の肩をがっしりと両手で掴まえて。
「2階級特進」
なんの階級だよと、聞き返したいところではあったけれど
(つまり、なんらかの理由を付けられて……というか、これを浮気にカウントされて、今から俺は……殺されちゃうと、いうことか?)
そんな俺の想像に反して、ネルは――




