重たい足取りの帰り道
俺も彼女のことを同じく……。大事に考えていたつもりだけに それだけは――
ヴィルマにしたってそうだ。いずれは俺たちの元を、離れて行かなくては、ならない子な訳だ。不埒な家主が腕力で、もぎ取った女性数名を侍らせて、住まいに帰って来るなど――こんな出来事が、彼女の将来に良い影響を及ぼすとは、とても思えない。
しかし、クィンヒルデたちを連れ帰らないで放置すれば――村での騒動。大剣に額を叩きつけ、自害しようとした場面を思い出して、冷たい汗が背中を伝う。
(おおぉぉぉおおぉぉ……なんだコレ? なんで……俺が、こんな訳の分からんことに巻き込まれて、思い悩まなくちゃいかん……)
脳裏に浮かぶ――今は亡き、ツォンカパの面影。
(アイツだ! アイツと関わったせいだ! ツ……ツォンカパの野郎ぅ……)
呪ってみたところで草葉の陰のアイツは、意にも介さないどころか……。つまらなそうに鼻で笑いそうでは……ある。
そもそもが、元を正せば。過去に俺が、ネルのおっぱいに耽溺してしまったのが、問題の大元と言えなくもない訳で……。お門違いも、甚だしいに違いない。
トボトボと歩いていると夜が明け、白み切った空に――我が家のシルエットが見えて来た。
「……なんだよ、ここは。スキュデリ? お前、村の側に……こんな所あるの……知ってたかよ?」
ウルリーカが、辺りの様子を見回す。
「……いえ、私は何年も前に、カンプラード派の無手の業を学びに……貴女より早く、村を離れましたので……。でも私も村のそばに、こんな場所があったなんて知りませんでしたし……聞いたこともありません。先日の泉にしたってそうです」
スキュデリも、驚きを隠しきれない様子で。




