どうしてこうなった……押しかけ寵姫プラス3 【Picture】
「……のぉ? ツガータ? お腹が空いたんじゃが……? 畑のお野菜も、果物も、今は食べる気がせんのじゃ……」裾を引っ張り訴える欠食児。
(……何が……どーしてこうなった)
ヴィルマの声に、テーブルの椅子から立ち上がる。
手早くパスタでもと考え、支度をして、
煮立つ鍋の湯に、浮かび上がっては消える泡を眺め、慎ましくも静かな我が家が何故、この騒々しい有様と化してしまったのか……と言うことについて、その経緯を思い返していた――
* * *
クィンヒルデとの闘諍に勝利したその日。結局、オークたちのしきたりが求めるままに従う以外に、無難に場を治める方法を俺は、思いつかなかった。
そして彼女と、彼女に敗れて隷属している、ウルリーカとスキュデリの3人を引き連れて、重い足取りで家路を帰る羽目に。
ご丁寧に帰る際には、鞣し終えたワーグたちの毛皮に――オークたちが調合した矢毒「森の毒」を満たした、お裾分けの甕。ついでに調合しておいたと言う、コイツら謹製の士気高揚剤である幻覚剤「勲しの夢」それとゴブリンたちが作る、ナアス蠅除けの匂い袋を作るための百合の球根まで、村の皆から戴いて持ち帰ることになった。
今まで提供して来た「鏃石」を始めとした、様々な礼の代わり、その一部……と言うことらしいが――。
気分は、村で乱暴狼藉を働いた末に――女性と、お宝を巻き上げて立ち去る、山賊か何かの……まさにソレ。
(どーしよう……ネルとヴィルマに、なんて言い訳しよう……)
帰る道すがらに考え続けたのは、そればかり。20年近く、ネルと暮らして――彼女が本当に、俺のことを大事に考えてくれていることは、良く分かっていた。
自身の頭の出来をそれほど良いものと、考えたことはなかった俺だったが……それを理解できないほど、お粗末な輩だとも思ってはいなかった。
ネルを悲しませるのは、不本意を通り越して、罪悪感を感じるなどといった生ぬるいものなどではなく――何に代えても避けたい。




