ココかぁ~? ココがえぇのんかぁ~?
けれどツォンカパと経た月日は、どうやら気づかない内に……俺にとって、大きな財産となって、実を結んでいた。
鼻の奥に湧き起こる幻臭と引き換えに、ほとんどの言語を数ヶ月程度で修得してしまう、ネルに作り変えられた「このバカげた頭」は、相変わらずの吸収力で、あの迷惑で厳めしいオークが、生涯を通して身に着けた武術の大半を、つぶさに我がモノとしてみせたらしい。
――クィンヒルデが振るう魔剣は、終始掠める気配すら見せなかった。
想像以上に目も、身体も、剣も、自由に動いたように思う。
奴との立ち合いでは一度も「良い形」になんて、成ったことすら無かったと言うのに。
……と言うより。
彼女の剣は、その威力と剣速、それとリーチこそは凄まじいものがあったが――ツォンカパの剣捌きに比べると、あまりに若く、駆け引きという点において、あのオークの老獪さには、とても及ばなかった。
一言で言うなら、素直過ぎる剣。
まるで重さを感じさせない、大剣の連撃ではあったが、それを――
潜って、うしろに飛んで、間合いを取って、躱して、逃れて、
――あとは、ネルのお陰で体力が尽きることが無いこちらは、クィンヒルデが、あの大剣を立ち上がれなくなるまで、振り回し続けさせるように、彼女の猛攻を誘って躱し続け、大剣が止まったら、手にした長剣の腹で、怪我をさせない程度に、ぺちぺち♪ ちょっかいをかける。その繰り返しで、ことは済んでしまった。
(……名付けて、卑剣……DQNがウェ~イ♪)
「……しっかし、このデカい剣をあれだけ振り回し続けるとか……一体、どう言う身体してんだよ」
先ほどまで、唸り続けた大剣の剣圧を思い返して、寒いものを感じ――強張ったままの顔で、墓穴を掘る一言を口にしてしまう俺。
 




