見るからにサイズがおかしい、彼女のそれ
「――おい」俺がツォンカパに貰った剣が投げ渡される。
剣は真鍮で覆われた鞘の先から、地面に落ちて金属音を鳴らして倒れた。のそのそと拾い上げ、手で土を払う。
「泉で放り出したままだったから、持って来といてやったぜ。使えよ。クィンヒルデ相手に素手で――ってんなら、どうでも良いけどな」
意地の悪そうな表情で、口の端の片方を吊り上げるウルリーカ。
(……有難い様で……有り難くない)
圧倒的、実力差があったツォンカパ相手であったからこそ、稽古の場では気兼ねなく、こいつを振るう事が出来た訳で……今は事情がまるで異なる。――こいつで斬れば、誰だって確実に死ぬ。
「――失礼だが、先程……その腰物を拝見させて頂いた」
目の前に立つ、今から斬り合いを興じようなどとは、とても思えない様子の彼女が――静かな調子で、口を開く。
「寸を詰め、磨り上げた様ではあったが……流石は、ツォンカパ殿といったところか。見事な目利き。……鉄の積み沸かし、重ねられた折り返し。それが冷たく、深い鉄の地肌になって現れている。その地肌が無骨な拵えとの対比で際立ち……実に美しい。強度を落とさぬ配慮からであろうが、切られていない銘。出来ることなら、是非とも知りたい所だ」
大きな胸の下で両腕を組んで、関心事のひとつについて訊ねる彼女。
話からすれば、どうやら、それなりに良い物だったらしいが……俺が彼女の求める解答を持ち合わせていない旨を伝えると「つまらぬ水を差した……聞き流して頂きたい」そう口にした後で、ひとつ静かな笑みを浮かべて
「許しも得ずに、もののぐを勝手させて頂いた、非礼に対する詫びに……私の魔剣、ウーラガンドをご覧に入れよう。スキュデリ!」




