ぺんぎん道楽
「……ネル」
「なぁに?」
「約束した物以外は、買わないからな?」
「だ、駄目?」
イタズラを見つけられた、子供のような表情を浮かべて、
必死に、それらを俺に買わせようと駄々をこね始める。
「買って! これ買って! ねぇ!! 訪ねて来たつがいに、思い出のイベント・アイテムを買ってあげるような、お心持ちで是非!!」
──正直なところ。
これまでの人生で、女性に何かを買ってプレゼントをするなどといった経験が無かった俺は、渋るそぶりを繕いつつも、買える範囲の物であれば、なんでもネルに買ってあげたいとは思っていた……のだが。
「……これは?」
そこに放り込まれていた商品は、とぐろを巻いた……茶色いウ〇コ型のクッションが、先端に取り付けられた、プラスチック製の棒。
「あちらで、帰りを待ちわびる、アタシの妹へのお土産にと……」
「……まぁ、いいだろう。……これは?」
次に、買い物カゴを漁って出て来たものは大仏の顔を模した、緑のラバー製マスク。
「つがいとの生活の中で倦怠k……」
「要らん」
大騒ぎする彼女が、商品を戻そうとする俺の手を必死に思い留まらせようとするけれど、……知るか。値段を見て見れば4980円? ふざけんな。
「次のこれは……なんだ?」
出てきた物は、ドレッシング・ボトルのような容器に、いかがわしいラベルで、包装された透明な液体。
「……えんしぇんと・クレオパトラろーしょん♡ えろえろ一番搾り……です」
「──でかした。購入を許可する。1ダース持って来い」
「これは……ジョイント式フラフープ? 要らん」
「この全身タイツは……何に使うつもりなんだ?」
「退屈な時にアンタと2人で、これを着て暇つぶしに人文字を……」
「要らん……いや、ちょっと待て……いや、やっぱり要らん」
一瞬、頭に浮かんだエロいイメージに、購入を許そうかとも思ったが──やはり、必要性は当然の如く、見出せない。