迫りくるカッコウ
混乱した頭には、雨季を待つカブトエビや、それこそ季節を待って花なり実なりをつける植物など色々浮かび上がるけれども。
大学の矢鱈ペット方面に強い、あの彼女に訊ねたなら……他にも、色々と名前は挙げられそうに思う。
* * *
つがいで抱卵を行う存在の事なら。
いくら俺でも、それなりに思い当たる存在は知っている。
もし、ネルが卵を生むにあたって、共に抱卵(卵を抱け! と言われても、俺にはまぁ……無理な芸当である訳だが――それは置いておくとして)……産卵のためにパートナーの存在を必要としたのだとしたら、
彼女が、お腹に抱え込んでいた卵を生むことを「今は適していない」と判断して、俺と一緒になる事で、……環境も安定をみたことで――卵を生んだのだとしたなら
これを……なんと言ったか……。
いや、分かっている。この考えに至る過程には、沢山の――過程が、織り交ぜられていて
これを盾にネルの生んだ卵が『俺のモノではない!』と言い張る根拠とするには、甚だ心許ない、か細い論拠に過ぎない事は分かっている。
状況証拠の全てが、あの卵の親の片割れが俺であることを示している。
きっと出合い頭に俺の眼球に舌を這わせて、DNAだって取得した上で、個人認証を行ってみせただろうトーヴェに聞いたって……あの卵の持つ遺伝子の半分は俺のモノだと、太鼓判を押してくれる事だろう。
こうなると『生まれ変わる』と言う、良く分からないシステムについて知っていそうな、教会に引き篭もりっ放しの女神、アレクサンドラに――混乱気味に常軌を逸した表情か、なにをしでかすのか読み取れないアへ顔で詰め寄って、
荒ぶる相棒、クーゲルシュライバーを「今日のこいつ……気が立ってっからよぉ? 何しでかすか分からないゼぇ?」てな具合で けしかけて
システムについての詳細な説明を要求するべきな気もしてこないでも無い。
今日の今日まで「家長様で御座~い」と――分不相応な立ち位置で、ふんぞり返って、あれやこれやと、好き放題して来た自分な訳だ。




