驚かされる内容の質が違うんです……多分
堰を切った悪魔のゲラゲラと言う――いつもであれば耳障り過ぎる、嗤い声を背中で聞き、ネルが口にした言葉の意味を必死に探る。
「お、おお……そ、そうか俺の卵か。でも今日は、もう――、日も暮れちまったし……そんな大きな卵、今から料理するのも大変だろうしさ」
きっと彼女は……この卵を、なんらかの思惑で俺の口にさせたかったのだと……こんな時間から、腕捲りさせて卵料理に張り切らせるのも悪いと考え、
それは、また明日の朝にでも――と、やんわりと押し留め様としたところ
「卵料理とか言ったんじゃないわよ!? ふざけた事言ってると、アンタでも喰い殺すわよ!! アンタの雛が孵るって言ってんのよ!」
紀州道成寺の昔話――清姫もかくや、と言った怖ろし気な迫力で……雛? エ゛ッ? お、俺の子供?!
その衝撃の一言は――連帯保証で返し切れない額の借金を突如、背負い込む事になったみたいな、俺の意識を目の前の卵の色と同じ……真っ白に染め尽くすのに、充分過ぎる威力のものだった。
「……うそん」
決して、ネルとの間に子供が欲しく無かった訳じゃない。
むしろ常々……デシレアみたいな子供をコイツが生んでくれたならと、願い続けて来た。これは嘘じゃない。
でも、だからって……卵。
よりによって卵。
少しばかり……ショッキング過ぎや、しませんかね。
いや、彼女が『龍』と言う存在であることは理解していたつもりな訳で……これは望んだままの結果だという以外に――言いようも無いのかも知れないけれど。
ほんのちょっと、ほんのちょっとで良いから、ラマーズ法的な……ワン・クッションの一助にでもなりそうな――そんなものが是非、欲しかった。
いや、今からでも遅くは無い。そのワン・クッションを置いては貰えないものだろうか?!。




