呑んだくれていたのかと思いきや
⦅待って! 待って!! 今! 今! 蔓を解いて貰うからっ?!⦆
ネルの慌てた声。どうしたものかと思い回らない頭で、動きを止める。見たところ逃げ場のようなものは無いだろうし……待ってやることにしましょうか。
水辺に集まった蛇が、絡み合ったお互いの身体を解く様に、茨の蔓が解けていく。
魔剣を悪魔に手渡し、ネルが姿を見せるのを待っていると――しばらくして、大樹の幹の俺たちの側の蔓が解けて。内側の様子が露わになった。
時刻も夜に差し掛かり、森の暗さと相まって、中の様子は……中央にネルが座していることが、なんとなく理解できると言った程度。
仕方も無く、久しぶりの伴侶の顔を鮮明に見るには、些か もどかしい上に、役不足な「ぺろぺろ知覚」をON。大気の動きから淡いシルエットを掴む。
蔓に囲われた中央には、野生動物めいた警戒の様子を示す彼女が――なにかを抱えて座り込んでいた。
周囲には散乱したスナック菓子に、菓子パンの袋。積み上げられた缶詰めの空き缶に、お茶やジュースのペットボトルが――テレビに観るゴミ屋敷の如くに散乱し、自堕落な生活を送っていた様子が伺える。
けれどもまぁ……
酒のカン、びん、ペットボトルが転がっていなかった辺り、採点が甘すぎる気も……しないでもないけれど……及第点と言う事にしておこう。
傍らに一緒に立っていたエルフのルチェッタは、余りの……その様子に呆れ果てて(そうか……エルフって夜目が利くんだっけか)
言葉を無くしたかのように立ち尽くし、なんだかお見苦しいところをお見せしちゃって、申し訳無いです――いや、違う。
明らかに……なにかを注視して、佇み、
オーサの抜け殻で製作された鞘に納められた魔剣を手に、必死に嗤いを噛み殺している……つもりの悪魔は身体を震わせて?
「……ご、御主人様……御主人様っ……ほ、ほら! は……早く大奥様の……お迎えに……」
堪えるのも限界とばかりに、力一杯に俺の背を打つ。




