……出歯亀なんかじゃ無いやい
「――おい、出歯亀野郎」
3人の内の中で、一番小柄な――それでも170センチは、ありそうな身長だったが……その彼女から罵声が飛ぶ。「出歯亀野郎」などといった、心無い言葉をかける割には、身体を隠そうともせず、ニヤニヤと笑みすら浮かべて。
淡く、青い肌のその娘は、手首に巻いていた紐で髪を短いポニーテールに結うと
「死ぬ前にイイ物、拝めたなぁ? オイ」
ボキボキと指を鳴らし、俺の方にゆっくり近づいて来る。
この時になって、ようやく自分が――図らずも女性の水浴びを覗く、破廉恥なポジションに存在していることに気づいて
弁明を諦めて……手にした剣を彼女らの側に放り投げた。
「あん? なんだよ? 剣で裸のオレたちを脅して、無理矢理犯そうとかしねぇのかよ? ……張り合いねぇな」
なんだか……がっかりした口振り。
――こういうところは、俺が最も良く知るオーク、ツォンカパ達そのもの。
裸の彼女らを凝視し続けるのも後ろめたかった俺は、泉に背を向けた。
背後で放り投げた剣に向かう彼女らの気配がひとつ。
耳をそばだてていると――どうやら鞘から剣を抜き放ったのか。
……そりゃあね? 裸で水浴びしてるところで、刃物持った男がやって来たなら――押さえられるなら、得物は押さえるよね。
(痛いのは嫌だけど……言い訳無用な、この状況。……せめて覗き魔として成敗されるのだけは……なんとかしたかったけど……もうイイや……潔く斬られよう)
不可抗力以外の何ものでも無かった訳だけど……それなりの良識は持ち合わせていたつもりの俺。
かけられた「出歯亀野郎」の一言に傷ついて、笑わば笑えといった――そんな自暴自棄な感じだったりする。
 




