焦げちまったよ、真っ黒だよ
そもそも一方的にちょっかいを掛けて来て置いて、いや……それは、こちらからすればの話でしか無いのかも知れないが――兎も角、喧嘩内容が気に入らないとは、とても言えないに違いない。
こちらが思い煩う事でも無いだろうし……。面倒臭いし……トキノたちに任せてしまおう。
けれども、こちら側に いたずらに死者を出す意図が無い事が、早々に王国側も理解できたらしい。気が付いた時には、領内の懐深く――地下世界クレピュスキュルがある辺りにまで、軍勢の侵入を許す形となってしまっていた。
とは言え、ウチの面々の事を考えれば――そんな状況にあってなお、彼ら王国側の運命は、未だ まるで、予断を許さない状況と言わざるを得ない。
(全滅しちゃうまで、数分って……ところだろうなぁ)
* * *
ネルが姿を消してからのシルウェストリスの我が家。
王国との戦争の真っ最中であったとしても、とてもでは無いけれど、その程度の事で……じっと座しているなど出来ず。
いや、戦争如きで その程度で……と言うのは、適当とは言えないのか反省。でも、他に表現するのに、ぴったりな言い表し方も無いし、どうしたものなのか。
つまりは、瑣末な……夕食に何を食べるかを思い悩む程度のことでしか無い、この諍い。
居なくなったネルの事を片時でも忘れ、忙殺されるには、全く足りず……
俺は、冬眠に失敗した熊か何かのように、あちらこちらへとウロウロと出張っては、雑事を買って出る様になっていた。
日本のチュガ・プルカヌリ公館が完成したとのことで、落成記念のパーティーに出向いて帰って来て、塗りたくった――油分過多なドーランをスキンミルクで、落としている最中の事。
「御っ主人様ぁ♬ 喜んで下さぁい♪ お仕事! お仕事が入りますよぉ♡」
「あ゛ぁ!?」
トンチキに浮かれ騒ぐ悪魔に、まるで殺気立って目を剥くウルリーカみたいな声を上げてしまっていた俺。
そんなこと気にする様も見せずに、俺からパフとスキンミルクを取り上げると、悪魔は松崎しげる分を落としにかかる。




