……巣って、なんだよ
店内は高く積み上げられた商品が、所狭しと並べられ、それが目隠し代わりになって、人の視線に閉口していた俺には、この上無く有難い。
まさに〝石を得たダンゴムシの如し〟
少し落ち着きを取り戻した俺は、ネルの買い物のついでに、必要そうな物を買い揃えることにして
──今から向かう、ネルの言う『巣』について少し考えてみた。
この時点に来ると既にネルが「最も古き六の大龍の一頭にして、遍く全ての生命を司る白龍」だと言う話も──あまり気にもしなくなっていた……かも知れない。
考えることを放棄していたとも言う。
「あとで本当の姿のアタシも見せてあげるわよ」
その言葉も、どーせその時になってみれば、事実として披露されるに違いない。
もはや、ここまで来たら──どう疑ったところで無駄なことだと、妙な諦観すら持ち始めていた。
売り物の鏡に映り込んだ、自分の「顔」の非常識なこと……非常識なこと。
さて『巣』だよ『巣』。
イメージとしては……まずは、某狩りゲーに登場する、火竜夫婦が卵を護っているような洞窟が思い浮かぶ……が。
──うん、無いな。ナイナイ。
そんな環境で俺が生きていける訳が無い。
すぐに死んでしまえる自信がある。
生まれ変わる以前の俺にしたって同じことだろう。
……と、なると。
ノイバンシュタイン城みたいな、デッカいお城に……金銀財宝を詰め込んだファンタジー感、満載のお城?
どうしよう……。まったく、気が休まる気が……しねぇ。
取り留めも無く考え続け、ネルに引っ張られるままに店内を歩き回って──気が付いてみれば、アレコレアレコレ……アレコレアレコレアレコレアレコレ……遠慮会釈無く、ネルが放り込んで来る商品で、買い物カゴは一杯に。