電動母乳搾乳機ダブリュー
「ソーセージ茹でて、パンに挟んで食うか?」
欠食気味のお子様は、大喜び。支度に取り掛かっていると、ヴィルマの声。
「……のぉ? テーブルの上の……コレはなんじゃ? 箱に女のおっぱいの写真が付いておるのじゃが……おぬしとネルが、(電子音)ックする時に使うオモチャか? それとも箱の写真から察するに、ひょっとして……わしのおっぱいを大きくするための機械か? じゃったら、すぐにでも試してみたいのじゃ!」
――折角の平和な日常風景が台無しですよ。このお子様は……。突然、なにをぬかしやがる。
面倒臭くもあったが、ヴィルマに説明しようとすると、不貞寝をやめたのか――ネルがそれを代わってくれた。
「違うのよヴィルマ……この人。人間のお母さんが――赤ちゃんのために、おっぱいを搾る機械を買って来て、ウチのデモピレさんに、使うつもりだったみたいなのよ」
「……? お母さんが、赤ちゃんのためにおっぱいを搾る機械? なぜ直接、飲ませてあげないで、わざわざ搾る必要があるのじゃ? そのまま飲ませてあげれば良いのじゃ」
この機械の本来の用途について。ヴィルマの疑問に、ネルは丁寧に答えて聞かせる。
夕食の支度を続け、背後で行われる母乳搾乳機の、用途についての説明内容に耳をそば立てる。
(コイツのことだ……。ヴィルマに何を吹き込み始めるか、分かったものじゃない)
「なぁんじゃ♪ じゃあコレは、乳首の大きさが違うから、そもそもヤギさんには使えないんじゃな? ツガータもマヌケなのじゃ♬」
どうやら俺の心配を余所に説明は、まともに行われた様子。それとも俺の心配を読み取って、まともな説明を行ってくれたのか。
ネルにしても、ヴィルマに嘘を吹き込むのは躊躇われたのか……。
どちらにせよ、コイツにしては珍しく……まともな対応をして見せてくれた訳だ。
 




