スピリタスを呷る、ワイルド過ぎる方々
――同日夜――
俺は、花さんと小太郎に大荷物を括り付けて、ツォンカパの村を訪れていた。現世に里帰りした、お土産とばかりにアレコレ手渡し、それらの説明を済ませた後で。村の中央の広場で、借りた大鍋に湯を沸かし、大量の袋ラーメンをぶち込んで皆に振る舞った。
花さんと小太郎は、村の誰かに貰ったワーグの肉と骨を、ボリボリと齧って御機嫌な様子。
見える位置に急造された牢に囚われた、捕虜のゴブリンたちは――そんな2頭を目にするなり、肝を潰して死んでしまいそうなほどに、怯えに怯えて……気の毒なこと、この上無い。
手っ取り早く作れる、即席麺を平らげた後は、スピリタスを回し飲みして、火を囲んで――皆は上機嫌に、大騒ぎの様相を呈し始めていた。
(……この酒をラッパ飲みで呷る、こいつらの内臓は一体どうなっているんだ?)
「……しかし、良かったのか?」側に腰を下ろした、ツォンカパが火を眺めながら――
「……オークにしては細かいよな」痛いところを突かれたとでも言うような感じで、気まずそうな空気をひとつ、この巨体のオークは黙り込んでしまった。
この村で使って貰うために、持ち込んだ様々な品は――最初、思いもしなかったことに。頑として、はね退けられてしまった。理由を聞いてみると曰く
「施しを受け取る訳にはいかぬ」
……らしいといえば、こいつ等らしい理由ではある。
でも「ハイ、そうですか」と、これを持って帰って、無駄にするのも能がない。
取り敢えず、これらをなんとか受け取って貰うため――以前、ツォンカパを通じて譲り受けたヤギ、我が家のデモピレ母さんの返礼として、これらの品々を用意したことにして、
「さっさと村を復興してくれ。でないと次に、こういう事があった場合、俺がまた困ることになるかも知れないだろ?」
と、適当か どうも良く解らない方便を弄して、ようやく彼らは荷を受け取ってくれた。……本当に、面倒臭い。
「良いよ別に」黙り込んで置物の様になってしまった、この厳つい隣人に思わず苦笑い。
「釘と……かすがいに蝶番。……あの数を調達するのも難儀だろうに。おまけにこれだ」




