家長権限により……没収
荷物を家に運び入れると、ネルは我が家の畑のシステムの説明を兼ねて、収穫用のハサミをヴィルマに手渡しに行った。
(……なんであの子。この状況とか、ネルの説明をすんなり受け入れられたんだろ?)
大人の話を無条件に信じ込むような……。暗愚とも言うべき、純粋さからくるものだとは、ちょっと考えられない――。
生まれ育った環境のせいであることは想像できる――なんでも徹底的に、自分の頭で考える。年齢不相応な賢さを持った子が、ヴィルマに思えた。
なにか、そこには理由があるのかも知れないが……。首を突っ込んで良い物か、どうか……。
そんなことを少しだけ考えた後で、俺も荷運びと、荷ほどきを済ませてしまうことにした。
* * *
「――没収」
狭い我が家の中。所狭しと拡げられた、荷物を前にして――
ヴィルマの所持品の中から現れた、葉巻の箱とビューター製のスキットルを取り上げる。
葉巻の箱にはパルタガスと銘柄が書かれていた。高価なキューバの葉巻なのだとか。
スキットルの中身は、同じくヴィルマの故郷の酒、バハマ・クラブの7年物だと言う。その他にもコンドームやら、葉巻を保管するための箱 ヒュミドールやら、吸い口をカットするギロチン・カッター。香水に化粧品類。ホールのナツメグ、シナモン・スティックなどのスパイス類が収められた小瓶、乳鉢に天秤。なんだか良く解らない様々な品の数々が、出て来る出て来る――。
「か! 返して!? 返して欲しいのじゃあ~~~っ?!」
取り上げられた物を取り返そうと――ぴょんぴょんと、飛び跳ねて必死に訴えるロリ。
俺の背後から葉巻の箱を手に取り、匂いを嗅いで顔をしかめるネル。
「……人間のお酒は、素晴らしいと思うけど。……この煙草って奴だけは、理解できないわ。どうして、わざわざ毒でしかない物を摂取したがるのかしら……」




