触れてはならなかったスイッチ
「ヴィルマの服と下着、あとは履物。他に要る物があれば買ってやってくれ」
「らじゃ♬」
「……酒買う金じゃないからな? あと全身タイツなんかも要らん」
「やじゃ……」
「頼むよ……他にも、買ってまわりたい物があるんだって。聞き分けてくれよぉ」
いつも通りの やりとりを繰り広げていると――少し離れた衣料コーナーの辺りから、ヴィルマの声。
「ほあぁぁぁあぁぁ~~~~~~~っ!?」(今度は、何がどーした……)
面倒臭そうな気配を感じつつも心配になり、様子を窺いに向かう。すると、なぜだかヴィルマは、女児向けアニメのキャラクターが描かれたTシャツと、サンダルを手に固まっていた。
「……どうしたんだよ」
その言葉に反応も示さずに、ぶつぶつ……と。なにかを呟き続けるヴィルマ。
「……さ、サイコパス……鬱きゅあ・マックスダークの……Tシャツ……」
「鬱キュア?」思わず聞き返す。
「日本人のくせに知らんのか?!」
そして、この子の妙なスイッチに触れてしまったのか。火を噴く勢いの説明が、始まり――止まらなくなってしまった。
「サイコパス鬱きゅあ・マックスダークといってじゃな! 日曜日の朝7:30から開始される女児向け番組、ぷいきゅあ♡ のシリーズ作品なのじゃ! ドラマ、ファースト・クラスみたいなドロドロした展開の作品でじゃな? いじめ、不登校、友人間の愛憎劇が欠かさず描かれる話題作なのじゃ。登場人物全員が、なんらかの闇を抱えてる上に、展開に救いは全くなくてじゃの? 作中では、日本の現代社会で問題視されつつある、介護問題も取り上げられているのじゃ! 主人公を前にして大きなものを生み落とす、お爺さんまで登場するのじゃが、表情を歪めて、そのお爺さんに暴言を吐いて罵る主人公が……もぉ~なのじゃ♬」(…………)




