世知辛い世の中なんだから
「……なん……じゃと……イチローは、日本におらんと……言うの……か」
風呂から上がってネルに貰った、冷凍カット・マンゴーを齧り、ヴィルマは大きく目を見開いて――打ち震えていた。
メトレス・マリアも、どうしてメジャーのイチローが、日本に居ると思ったのか……。
「それで? どうして、お前はココに来たんだよ?」
ヴィルマの様子を気にかけもせずに尋ねるも――事案がぁ~! ……などと、うるさい昨今の日本。昼間派出所で、色々と書類にサインもした手前……正直、気が気ではない。
今、こうしてる最中にも、ドアを叩いてお巡りSa……玄関のチャイムが鳴る音が響く――とっさに、首をすくめる俺。
「はいはいはぁ~い♪」
ネルが玄関へ向かうと――チャイムの主は、宅配業者さん。
ホッと、胸を撫でおろす。心臓に悪いどころの話じゃない……。
「……おぉ……おっも。なに買ったのよ、コレ? ポータブル・リチウムソーラー蓄発電機? 16万円?!」
 
大型のアタッシュ・ケースほどの大きさがある、ポチった商品を抱えてネルは、その金額に非難交じりの声。
――が、今はそれどころの話じゃない。
「金あるのぉ~。 あぁ、どうしてツガータの……」
「ツガータ違う……俺の名前は、百千万億 春夏秋冬」
「呼び辛いのじゃ、まぁ……その内にの?」
悪びれもせず。――そして、気を取りなおした様子で、ここを訪ねて来た理由についてを語るヴィルマ。
「……で、どうしてツガータの所に厄介になりに来たのかじゃったな? それはのぉ~。本当に、もぉ……ポリスのお姉さんが、案内してくれたホテルが高かったのじゃ!! 信じられん! 一泊188ECドルじゃと!? 王様の住まいか?! おまけに英語対応可と、カウンターにあったと言うのに、マネージャーを含めて誰一人、大して話せもせん! ふざけるなじゃ! ファッ(電子音)ー!! 思わず両手で中指オッ立てて、速攻ぶっちしてやったのじゃ!」
 




