はいちゅう
「――あ~それで、あんな格好だった訳だ……」
派出所の婦人警官さんの、私物のTシャツに着替えた困ったちゃんに、俺は事情を説明して貰っていた。
派出所に着いたヴィルマは、最初、怯えに怯えた様子を見せていたが、婦人警官の1人から「……食べる?」と、野生動物を餌付けするノリで、個別包装された お菓子を差し出されて――それをすぐに口に放り込むと、突然、上機嫌に。
「な、なんじゃ! ……なんじゃ!? この(電子音)な美味しさは?! 生まれて初めて食べたぞ!!」
ハイチュウを、むっちゃむっちゃ♪ させての大騒ぎ。
「……それで、どうです?」
丁重に丁重に、俺に――この子の事情についてを聞いて来る、お巡りさん。
俺は、この子の口から飛び出す、聞くに堪えない言葉の数々をフィルターにかけて、できる限り、波風が立たないように気をつけ、事情を説明。
「なんかですね? 日本に着いてすぐに空港で、あの格好に着替えたそうなんです……サイズを見るために?」
「……はぁ?」珍しい生き物でも見るかのように、ヴィルマを眺める、お巡りさん。
「で、時差ボケで寝惚けていたそうなんですけど……、空港のトイレで着替えた後に、そのままの格好で、バスに乗ってしまって、眠ってしまったそうで。……で、パスポートや着替え、所持金なんかも、全部入れたスーツケースを、バスに置いたまま降りて来てしまい、今に至る……と。まぁ……そう言うことみたいですね。調書か何かにサイン要ります?」
「……一応、お願いできるかな? ごめんね」申し訳無さそうに、何枚かの書類に、氏名と住所の記載を求められた。
「ちなみにこの子、どうなるんです?」
書類の空欄を埋める傍ら訊ねてみれば――




