ネイサ・エティエンヌ・ヴィルマ
「すみません。お話が盛り上がっておられるようだけど……。続きは、交番の方でイイかな? ……なんだかゴメンね」
心底、申し訳無さそうな様子のお巡りさんたち。
……いえ、良いんですよ? 人目もありますしね。
「ね……ネイサ・エティエンヌ・ヴィルマじゃ。……ぶ、無事に帰れるんじゃろうな……」
* * *
パトカーに乗せられる際にもヴィルマは、それはそれは……も~、暴れに暴れた。
落ち着かせようと、お巡りさんも一生懸命だったが、この子の口から飛び出す言葉は、――訛り2割に、スラング4割、残りがネイティブなアメリカ英語とあって、シルウェストリスで、晴耕雨読……じゃなかった、晴読雨読に身に着けた、俺の英語力でも意志の疎通には、大層な苦労を強いられた。
――で、なんとかパトカーに この子を乗せ終えると俺も付き合う羽目に。
とどのつまりが……俺とこの子は、大変な困ったちゃんと、その関係者として派出所に案内されることになってしまったらしい。
そのまま残して置いて来てしまったネルが、少し心配だったが……。
一応の常識は持ち合わせている奴ではある。じきに一人で帰るに違いない。多分、きっと。
走り出したパトカーの車内で、ヴィルマは流れる街並みに魅入っていた――。
この子の子供らしい顔に、少し和む。
「凄いのぉ! 本当に綺麗じゃのぉ! この国は! おまけに建物の影でファック(電子音)しとる、商売女もおらんし、昼間っからヤクを食ろうて、よたついておる者もおらん! 凄いのぉ! 凄いのぉ!」
……お巡りさんが、2人も乗ってるパトカーの中で(電子音)ァックだの、ヤクだの口に出すのは、本当にやめて貰えませんかね?
肝を冷やす、俺の心配を余所にパトカーは、すぐに派出所に到着。
 




