英語とクレオール語とスラングの……ちゃんぽん
「えぇっと……。お巡りさん? なんだかこの子……ですね? お巡りさんの腰についてる、ピストルが怖いらしくて……」
ようやく息を整え終えた、警官2人は顔を見合わせる。ひょっとしたら、そう言うことは他にも経験があったのかも知れない。
「多分、この子……。南米か、その辺りから来た子なんだと思うんですけど(……いや、実際はどうか知らんけどな)、警察を信用する訳には いかなかった環境の生まれらしくって。……で、ですね。なんだか、お巡りさん2人に賄賂を渡さなかったせいで、連れ去られる、殺されると怯えているみたいで――」
あっけにとられるお巡りさんたち。うん、だろーね。
そんなこんなで、流れ的に? 善意の一市民として、この子から事情を聞き出す役目を引き受ける事になってしまった。
(ネル~? 面倒臭いから今、出て来ないでくれよぉ~?)
昨夜のバイトあがりに、ネルから返却された指輪で、人知れずメッセージ。
* * *
お巡りさん2人から、少しだけ離れた植え込みの縁に腰かけて、この子の話を聞く。そのお巡りさんたちは……と言うと心配そうに、こちらの様子を伺ってくれていた。滲み出す、人の好さそうな空気。この国に生まれて俺、本当に良かった――
「……まだ、あの警官共……わしの身体を諦めておらんらしい。イヤらしい目つきで、嘗め回すように見ておるわ。怖気がするわ豚共が。フ(電子音)ク」
……見捨てて帰ってやろうか、この子。
「えぇっと……。どうしてこんな格好で、こんな所を?」
気を取り直して俺は、この子から事情を聞くと、
女の子は警官2人から、注意を逸らすことこそ無かったが、俺の問いかけには素直に応えてくれた。
「メトレス……マリアに、言われたのじゃ……」
「メトレス? 先生?」
「違うのじゃ。ヴードゥーのマンボの方じゃ」
(……の方じゃと言われても、知らないけどね。って、ヴードゥー?)
「んー……なんて言われたの? ご両親は? そのマリアさんって方が、お母さん?」
「両親は大地震のあとに蔓延したコレラで、死んだそうじゃ」




