ピロー・トークは、アタリメの香り
「知らなかった……にしても。アンタはアタシに食べ物を差し出してくれて──そして、アタシは求愛されるなんて、始めての経験だったから……。冷静に考えれば、アンタにそのつもりが無かったことも、すぐに理解できたんだけど、意識しちゃったし……凄く、嬉しくもあったし……」
──そこまで言ったあとでネルは、少し はにかんだ笑顔を浮かべ。
「果物を口にして、アンタからの求愛を受けることにしたの」
* * *
「──お前さ? さっき、死に別れる前の俺のことを『人の姿を成した、アタシのイデアに鼻の下を延ばして……ホイホイ、つがいになってくれるような……オスだったわ』とか言って? バカにしてたけど、お前は、どーなんだ。お前は? 果物ひとつ貰って、つがいになるのを決めたって……」
「バカね♪ 似た者同士だったから、つがいになれたんじゃない」
ネルは笑って「どおどお? チョロインっぷりが凄いでしょう~? アンタ苦労もせずに、こぉんな綺麗な、つがいをまたGETできて超ラッキーよ♬」
からかう様な、小鳥がついばむようなキス。
……チョロインが、どーとかって、レベルのお話じゃ断じてねぇ。
きょう日、小学生でも知らない人から何かを貰ったからって、ついて行ったりはしねぇぞ……。
でも、苦労せずにこんな綺麗なつがいを……と言う件に関しては全く、異論はございません。誠に、その通りかと存じます。
「……それで? 俺とお前が、死に別れることになった……俺の死亡原因ってなんだったんだ?」
ネルが話す、厨二臭──溢れて垂れ流さんばかりの話を、そのまま受け入れるには、常識が邪魔をし過ぎるけど……。
ひとまず、それらは脇に置いておく事に。