無断欠勤の申し開きを開始……く、苦しい
時間は、ランチタイムが終了した15時半ば。場所は繁華街。夜の営業前に「準備中」の札を出したばかりの、小さな個人経営の洋食店の中。
「……事情は、大体わかった」
ツォンカパほどでは無いにしても、険しい顔をした五十過ぎの店長は――ため息交じりに、不承不承と言った感じではあったが、納得してくれた。
『こちら』の時間は大して経過はしていなかった。しかし、ネルとシルウェストリスに飛び出すまでに11日。そして度々、ネルとの喧嘩が原因で俺自ら、こちらに買い出しに出掛けて来なくては、ならなかったこともあったため――その進んだ日数を合計すると16日もの時間が、あの日から経過してしまっていた。
そんな訳で、無断欠勤を理由に「ぶん殴られに」な訳だ。
『こちら』の世界では、たった16日しか経っていないにもかかわらず――俺の容姿が急変してしまったことについては、説明せねばならず……昨夜は、ネットを首っ引きになって検索しまくって「らしい」言い訳を用意するのに、苦労する羽目になった。
第二次性徴期以前に若返ってしまった状態で、20年近く、激変してしまった生活を余儀なくされ――身長は10センチ以上変化し、さらには元の容姿との、肉体年齢のズレときたら……。もう……ね?
有り得ないレベルだとしか、言いようが無かった。
これを目の前におられるオーナー兼、店長兼、メインシェフ。
見るからに昭和生まれな この御仁に、納得を頂けるように、説明せねばならない その難易度たるや――ご想像、頂けるだろうか? と言うものだ。
「……熱中症で、ぶっ倒れた影響でなぁ」
コーヒーを注いだマグカップに手を伸ばして、店長は「信じられない」という様子で、こちらに視線を向ける。
「……で? その結果、脳の下垂体だったか? そこに影響が出たせいで、その「たっぱ」になっちまった……っと。……おっかねぇな、熱中症ってのも」




