ネル、うきうき
ネルは完全に浮かれた様子で、敬礼。
「大丈夫であります! このアタシめは! 例え毎日が、神田川の歌詞そのものな生活であろうとも! アンタさえ居てくれるならば、それだけで、ごはんをどんぶりで3杯は、お代わりして ご覧にいれます!」
(……あ、も~ダメだコイツ。遊びに遊び倒す気だ)
釘を刺すタイミングを、完全に失ったらしい。
「……どんぶり ご飯を、3杯もお代わりするような彼女は、神田川の歌詞には出なかったと思うぞ? 世代が違い過ぎて、大晦日に……何回か、聞いた程度で、あんまり詳しくは、知らねぇけどもさ」家のドアに手をかけたところで、
「……ふと今、思ったんだけどさ?」
家から一歩踏み出し、湧いた疑問を口に出そうとした――
「あ! アンタ! 聞いちゃ、ダメなこと聞く気でしょ?!」
「いやいやいや……気になるじゃん? お前、いくつなんだよ歳」面白半分に、からかうと「そんなことより、どこ? あっち行ったら、どこ行くの?」
話題をすり替えるべく、俺に対して特効を発揮する、自慢の胸を腕に押し当てて来る。
別に、そのことに大した興味があった訳では無かった俺は――その安い、お茶の濁し方に乗ってやることにした。
「まずは、服を買い換えないと……」
10㎝以上も背が伸びて、丈の合わなくなったズボンの裾をネルに披露。
「その次は?」訊ねられるや、思わず口をつぐむ俺「……? どうしたのよ?」
怪訝な顔で、顔を覗き込んでくるネルさん。感情が複雑に絡まる思考と言うのは――いくらコイツでも、読み取り辛いのか?
「取り敢えず……世話になった方に、ぶん殴られに……かな?」引き攣る顔をこらえて、『門』へ「それまで、この指輪……預かっといてくれるか? 多分、怒られちゃうからさ」




