現世に帰る ~シャケが如く~
倒したワーグたちの皮を剥いで肉をこそぐ者。なにかの植物の――虫コブを潰して、なめし液を作っている者。拾い集めた毒矢を矧ぎ直す者。ワーグたちの肉を燻製にする者(食うんかい)。
(こいつらの……このタフさ加減だけは、ホント羨ましい……)
燃え落ちた家屋の廃材を寄せ集めていた、近くのオークに軽く挨拶を交わすと、その場を後にした。
* * *
家に帰るとネルと2人、大急ぎで服を着替える。「この服着るの久しぶり♬」初めて出会った時に着ていた服を手に、ネルは大はしゃぎしていた。
「……おい」
「なぁに?」
浮かれるネルに釘を刺さそうとしたものの――
けれども……よくよく、考えて見れば。
シルウェストリスにやって来て、早20年近く……。
俺は一度も、現世に帰ったことがなかった。あちらと、こちらの時間の流れは、完全に隔絶しているとのネルの説明から、元の姿に戻るまでの間、大きく時間が経過しないようにと、考えたからに他ならなかったが――それは別としても2人で、どこかに出掛けることすらもなく。
(……やめとこ)ネルが浮かれてくれているのに、水を差すのも可哀想に思えて、それを口に出すのは止めることにした。
「あぁ♪ 分かる……分かるわ……。アンタの考えが、手に取るように分かる……」
(……なんか、小芝居を始めやがった)
「普段、構ってあげられない、つがいを……これを機とばかりに、甘やかしてやろうと考える、アンタの慮りが手に取るよーにっ!」
「……やっぱ、釘は刺させて貰う。あんま羽目を外し過ぎんなよ?」
「分かっております!」
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