頑張って......考えたんだけど......な……
こちらの言葉の音と近い、俺の記憶にある言語と言うと……ラテン語……か? 無駄に身に着けた語学が、ささやかに生きた瞬間なのか、これは……。
「そうだな……コイツのことは《de papilla niveus a draco》とでも呼んどく……か?」
そこまで口にしたところで、ふと思う。
名前なんて本当に、……どうでも良いに違いない。これが、こいつが事前に分かってさえいれば犠牲者は、もっと少なかったかも知れないのに。
「――これを持たされてたの知ったのは……あの時が、初めてだったんだわ。なんか、本当にごめん……」
「デ……ぱぴ? なんだ? 相変わらず、なんでも長いモノだな、人間は……」
開示できていれば、減らせていたかも知れない、犠牲者についての謝罪には、皆は、まるで意にも介さず、取ってつけたボトルの名前についてばかり、首を捻っていた。
ラテン語……格変化で、つまづいて後回しにしちゃったから、適当だけどもさ……。
「――《白龍の乳首》って意味だよ」
そう付け加えると一同は「おぉ……そちらの方が、短くて善い」と、口々に納得の声。
犠牲者についてを追求してこなかったのは、ツォンカパたちなりの、心遣いだったのかも知れないことは、分かるけど……も?
ネーミングセンスを貶されているようで……それも少し傷つくぞ?。
背伸び……し過ぎたんだな……分かってるよ。
「……ま、取り敢えず。今日は、もう……帰るわ。なんかあったら、また明日な」
指輪にボトルを仕舞って立ち上がると、村の皆は、またそれぞれの作業に戻り、忙しそうに走り回り始めた。
村が焼け落ちたのは、昨日の今日のことだけに――仕方も無かったけれど。




