おっぱいボトル
「それにね? 忘れてるかも知れないけど、この領域には、アタシが招いた存在以外は、入れないんだから♪」自信たっぷりに。
自信たっぷりに仰りますけどね? 勝手に入り込んで来た例外が、今この場に居るんじゃないのか? と口にしたかったが――グッと我慢。
「――で? ネル?」俺は、一応の確認のために訊ねていた。
とはいっても十中八九、俺の考え通りで、間違いは無いハズではあったのだが。
「あのボトルは、なんだったんだ?」
「ん~? あれ? あれはねぇ……」
背中を流しての説明の後で、水に浸かるようにネルは勧めてくれながら。
「ほら? アタシのおっぱいって……。色々、加減が難しいじゃない? 多く飲もうものなら、どこまで若返ちゃうとかも、イマイチ解らないし……」(……えっ? そうなの?)
「効果を知ったのもココ十数年な訳で、最近な訳だから、仕方無いわよ……ね? だから、ある程度の加減が利くように、妹にあのボトルを用意させておいたのよ……。中身は勿論、無尽蔵に出続ける、アタシのおっぱいよ♬」
説明は、やはり想像通りのもの。
「もう分かってはいると思うけど、あのボトルは、アンタの指輪に『結びつけて』おいたから、必要な時には考えて使うのよ? アンタ自身には要らなくても、必要になる機会は、あるかも知れないでしょ?」
聞くべき話を聞き終えて。身体が冷えた俺は、泉から上がると、彼女に手渡された服に着替え、いつもより明るく見える空を流れる金銀砂子を頼りに、ふたり一緒に家へと戻った。
* * *
――ワ―グたちの襲撃から、6日――
村に残った生存者は、ツォンカパを含めて十数名。足の速い数名を、村から逃した女子供、若いオークたちを呼び戻すために走らせると、残った者はフル回転で働いていた。
「――なるほど、なるほど」




