イデア? なにそれ?
「しかも、良くある映画なんかに登場する『人間』の優しさ的な? 愚かさを指してのバカって訳では、決して無くて……」
聴きたくありません。そんな補足。
「人の姿を成した……。あの頃は、もう少し髪は長かったけれど……アタシのイデアに鼻の下を延ばして……。それまでの生活を迷いもせずに、速攻でポイ♪ して、ホイホイつがいになってくれるような……オスだったわ」
「えっと……すいません。イデアって……なんでしょう? 難しいお言葉は分かりかねます」
「……アンタたち人間が『観る』姿形のことよ。例えば今……アンタは、アタシの姿がどう見えてるの?」
「パツキン、バインバインぼよーん♪ ロケットおっぱいな、出会って即合体のエッチぃ おねーちゃん……に御座います」
「ああぁぁぁ……アタシのつがいが……アタシが選んだ、つがいが……。どんどんもの凄い……おバカさんになって行く」
両手で顔を押さえ、絶望に満ちた声を洩らす彼女。
「お褒めに戴き、光栄の至り」
「……褒めてないわよ」
(良かった……さっきのネルの表情から幾分、元に戻ってくれた気がする。なんだか良く分からんが……正直、あの表情は目にしていて辛かった)
「……そう言うことは。思わなければ良いのにね。無理なのは分かるけど」
──再び深い溜息。
「もうアタシが、アンタの思ってること読み取ってるってことも忘れちゃってるんでしょ?」
「ゴミ虫並みの知能しか持ち合わせてなくて、あい……すいません」
「生命を司るアタシは、つがいのアンタが例えゴミ虫さんだったとしても、愛し続けてあげられる自信あるわよ?」
「……女神か」
「違うわよ。何度も何度も、最も古き六の大龍が、一頭だって言ってんじゃない。ああ、もぅ……面倒臭い」
(……あの? これまでの察しの良さは一体どちらへ?)