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CASE4:オーレリア/勝算あり

 次の日、さっそく調査を始めた。今回はとにかく時間が惜しい。もうちょっと長い期間を設定すればよかったかもしれない。いや、泣き言をいう暇もないな。


 一日中調べた結果としてわかったのは、やはりこのままでは厳しいということだった。おそらく、近くに強力なライバル店ができない限りはなんとかやっていけるだろうが、今のように一度大きな負債ができてしまうとリカバリーが難しい。


 まず、周囲に飲食店はそれほどなく、人通りも少なくない。そのおかげで客の入りもそこそこ。立地はまずまずといったところだだろう。


 店は前のオーナーの所有だったものをそのままもらったらしく、家賃はかかっていない。固定費が低いのは強みだ。ただ、店を引き継いだ経緯についてはあまり話したくなさそうだったから詳しくは聞いていない。


 店の営業時間は10~19時、店内は20人は入れるほどの広さで、お昼時にはほとんどいつも満員近くになっている。反対に、それ以外の時間はガラガラだ。


 メニューは定食を中心に多く取り揃えている。肉魚はもちろん、ちょっと変わり種なアラカルトまで多種多様だ。


 それに対応できているオーレリアの料理の腕前も大したものだ。特にスピード、仕上げるまでが早い。まるで早送りのような動きで料理が出来上がっていく。そのおかげでお昼の忙しい時間もなんとか一人で回せているようだ。


 もしかしたら奴隷時代に培った能力かもしれないな。一方で味については悪くはないものの若干大味に感じる。なんというか、学食っぽい味だ。俺は好き。


 そしてなにより痛いのは、オーレリアは数字に対して弱すぎるということだ。教育を受けていない分、しょうがないことではあるが、今後のことを考えると絶対に解決しなければならない。



 ◇◆◇◆◇◆◇



 なんとかやっていける、と前述したが、これはあくまでオーナーの人件費を考えなかった時の話だ。オーレリアだけ、もしくは家族経営でなんとか食うに困らない程度の儲けしかない。


 そして、心配な点が二つある。ひとつめ、資力のあるライバルが来た時に勝てないことだ。年々この町の人口は増え、新規参入も活発になってきている。いずれはここにもやってくるだろう。そのときに勝てる要素が少ない。立地がそこそこなことと固定費が低いだけではまだ弱い。


 ナンシーの店なら高品質な果物を入手できるだけのコネクションがあったし、両親が戻れば労働力も確保できた。


 また、カーラの店は商品の単価が高く、高品質な商品を自分で作れるという強みがあった。そして両方とも持ち家で賃料がかかっていなかった。


 だがオーレリアの店では仕入れのコネもなく、料理の品質と価格もそこそこ。固定費が低いだけでは厳しいと言わざるを得ない。


 ふたつめ、オーレリアの負担が大きすぎる。薄利多売の飲食店ではどうしても働きづめになってしまうが、彼女はまだ幼い、体力的にも心配だ。かといって人を雇うほどの余裕もない。もし彼女が体を壊しでもしたら終わりだ。


 場当たり的な施策をしても意味がない。だが期限は差し迫っている。さて、どうしたものか。


「あの......これ、よかったら」


 オーレリアが残り物で夕食を作ってくれたようだ。いつの間にか遅い時間になっていたらしい。考えるのに夢中で気づかなかった。


「あぁ、ありがとう。いただくよ......うん、うまい」


 なんだか懐かしい味だ。思っていた以上に空腹だったようで、箸が止まらない。ふと、厨房に戻ったオーレリアは俺が食べている姿をチラチラと見ていることに気が付いた。


「......どうかしたかい?」


「......たべてるなー、と思って」


 なんだろ。よくわからなくて「超食べてるよ」と意味不明な返しをしてしまった。相変わらずオーレリアは表情を変えない。そういえば、一番忙しい時間帯でも、時々、食べているお客様をじっと見つめていたことを思い出した。


「人が食べてるのを見るのが好きなのか?」


「…………うん……すきです。うれしいきもちになります」


「……そうかい」


 オーレリアはそう短く答えて片づけに戻った。そのとき、ほんの少しだけ笑った、気がする。それだけの、ほんの些細な反応だったが、それだけでここでこの仕事をするのが本当に好きなんだと伝わってきた。飲食店を回すのは並大抵のことではない。ここまでも大変な苦労があったんだろう。借金をしてでも、見知らぬ男の嫁になってでもこの店を守りたいという強い想いがあるんだろう。


 まだ事情は詳しく聞いていないし、これからも話してくれないかもしれないが、どうやら俺が踏ん張るだけの理由は充分にあるようだ。……丁度考えもまとまった。さて、始めよう。


「よし、オーレリア。一緒に振り返りと作戦会議だ。結論から言おう。この店の利益を5倍にする!」


 片づけと仕込みを終え、エプロンを片付けていたオーレリアが驚いたように俺を見つめている。さて、言ったからにはやるしかない。今回は俺の持ちうる前世の記憶をフル活用する必要があるだろうが、すでに勝算はある。

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