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CASE4:オーレリア/人に歴史あり

 ……まぁいい、良かったじゃないかオーケーしてもらえて。ハーレムのための第一歩だぞ。……ただなぁ、俺から言っておいてなんだが、子どもすぎるんだよなぁ。なんならもうすでに娘に見えるし、どうしたものかなぁ……。


 あれこれ考えていてもしょうがない。とりあえず詳しく聞いてみよう。


「なぁ、オーレリア。本当にいいのか?俺の嫁になって」


「いいですよ」


 若葉色をした瞳からはあまり感情の起伏を感じない。中学生くらいなのに、俺がそれくらいの時には、常に自分のリビドーと戦っていた気がする。


「嫁になるってどういうことか、何するか知ってる?」


「はい。旦那様に奉仕します。私の全てを捧げます」


「え〜……どうだろな〜」


 あどけない顔に似合わない言葉を機械のように話すオーレリア。顔が整っている分、本当に機械のような印象を受ける。これが今時の異世界っ子なのか? いままでが感情豊かすぎたのか? 俺が知らないだけで若い子ってこうなの? 嫁ってそういうものなの?


 だめだ。どんどんドツボにハマっていく。こういうときは言葉の枝葉に惑わされてはいけない。何故そう考えるに至ったのか、そこを探るのが手っ取り早い。


「なぁ、オーレリアはここで仕事をする前は何をしていたんだ?」


「シャハルで貴族の奴隷をしていました」


「そっかー」


 謎解けたわ。一瞬だったわ。


 前回の暗い季節の際、魔物の殲滅に尽力した隣国・シャハルには奴隷制度がいまだに残っている。そのほとんどは暗い季節で親を亡くした子どもたちだ。とはいえ、奴隷も雇い主を選ぶことができるため、ステレオタイプな鎖に繋がれた奴隷というのはごく一部だ。その一部とは、タチの悪い貴族に捕まり、なんらかの理由で逃げ出せなくなってしまった者だ。


 よく見ると、オーレリアの首元には擦れたような跡がある。古い傷だ。傷が治りかけては傷付き、治りかけては傷付き、を何度も繰り返すとああいう跡になる。あまりいい雇い主でなかったことは確かなようだ。


「それが、どうしてここで仕事を?」


 オーレリアは答えない。悲しそうな顔をして俯いてしまった。


「……はっきり言って、飲食店は地獄だよ。それでもここで仕事がしたいのかい?」


 これは本当だ。数あるビジネスモデルの中でも、飲食店ほど過酷なものはないだろう。


「……はい、わたし。このお店を……守りたいんです…………無理、ですか」


 オーレリアは今にも消え入りそうな声で答える。大切な場所なんだな。


「………厳しいが、無理ではない。だが辛く過酷な道のりになる。君の想像以上に、それでも、それでもやるんだな?」


「……はい。やります、なんでもやります」


 口調は静かだが、若葉色の瞳の奥に必死さを感じる。その小さな体全体から熱が伝わってくるようだ。


「……わかった。それなら俺も本気で支援する。覚悟はいいな」


 大袈裟なようだが、飲食店はそれほどまでに地獄なのだ。オーレリアは俺の目をまっすぐ見て、頷いた。


「……よし、ではさっそく一つ目の施策だ。その身なりをなんとかしろ。飲食店において清潔感は命、見た所掃除はしっかりやっているようだが、君が汚れていては意味がない」


「はい。わかりました」


 そういうやいなや、オーレリアは突然服を脱ぎ始めた。幼いが、女性らしい体つきをしている。いやいや、それどころじゃない。


「何をしている!」


 立ち上がって怒鳴る俺に驚くオーレリア。それがすぐに怯えた表情に変わる。


「え……あの……だって、汚いから……」


 オロオロとうろたえ、瞳いっぱいに涙が浮かんでいる。


「……ひとつ、お風呂場でやりなさい。ふたつ、お客様がこの光景を見たらどう思うかを常に考えなさい。どんな人気店だってイメージが落ちたら終わりなんだ。自分の行動全てが見られていると考えるように。そしてみっつ、嫁入り前の女子が気安く肌を晒すんじゃありません」


 オーレリアは泣き出してしまった。可愛い顔が台無しだ。


「ご、ごめんなさい……」


「……怒鳴ってすまない。つい驚いてしまって」


 オーレリアはえぐえぐと泣いてしまって、袖で涙を拭っている。すまない……オーレリア。


 この子を育成し、お店を軌道に乗せる、それも2週間で。とてつもない難易度だが、やるしかない。


 よし、さっそく準備に取り掛かろう。まずは明日一日市場調査だ。……オーレリアはまだ泣いている。ごめんよ。

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