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CASE3:フローラ/寝る子は育つ

 今日はフローラと近くの林を散歩をしている。相変わらず綺麗な場所だ。小川の流れる音、木々のせせらぎ、揺れる木漏れ日が心を満たしてくれる。フローラもリラックスしているようだ。小鳥を観察したり、小石を川に投げ込んだりしている。

 

「そういえば、どうして小説を書こうと思ったんだ?」


「……ま、まぁ昔から本を読むのが好きでしたから、自分でも書いてみたいと思った。それだけですよ」


 フローラは目を合わせずに答えた。なんだか投げやりな言い方だ。フローラは時々そういう態度をとることがある。ちょっとズカズカと踏み込み過ぎたかもしれない。反省。


 それにしても、最初に会った頃に比べるとだいぶ表情が柔らかくなった。それに、相変わらず肌は雪のように真っ白だが、顔色も良くなった。ただ目の下の隈は依然として残っている。


「フローラ、最近はよく眠れているのか?」


「誰かさんのせいでいつも疲れていますから、前より眠れるようになりましたよ」


 一瞬横目で睨まれた。適度な運動は睡眠の質を上げる。まぁやり過ぎたり睡眠の直前に激しい運動をすると寝つきが悪くなったりすることがあるが、今は考えなくても大丈夫だろう。


「そうか、なら次のステップだな。フローラ、今もベッドに入ってから寝付くまでは時間がかかるのか?」


「そうですね……だいたい1時間くらいはかかっているでしょうか。これでも以前よりかなりマシになりましたけど」


 1時間か、長いな。


「改善は見られるようだな。それはなにより。だが、もう一歩踏み込みたい。睡眠の慢性的な不足は、軽く酔っ払った状態と同じくらいパフォーマンスを下げてしまうし、それ以外にもデメリットは数え切れないほどあるからな」


「酔っ払った状態……お酒は好きですが、ずっとその状態は困りますね」


 フローラはお酒が好きなのか、いつかご一緒したいものだ。フローラは酔うとどうなるタイプなんだろう。泣くのか笑うのか、それとも絡むのか。うん、どれもいいな。俺は下戸だからお酒は飲めないけど。


「全くその通りだ。睡眠において、君には次の3つを意識してほしい。


 1、最低でも6時間以上寝ること

 2、眠くなるまではベッドに入らず、眠れない時は、ベッドから出ること

 3、毎朝同じ時間に起きること


 これだけでいい。できそうかい?」


「まぁ……それくらいなら。でも、ベッドから出てしまってもいいのですか?かえって目が冴えてしまいそうですけど」


 もっともな指摘だ。


「確かにその可能性はある。だが、それ以上に君自身に『ベッドは寝る場所』なんだと認識させる必要があるんだ。今は『ベッドは寝たり考え事をしたりする場所』だと認識している可能性が高いからな」


「認識……させる……?」


「そうだ。たとえば俺がここに来るたび、天使の鳴らすベルが鳴り響いたとしたら。そのうち君はベルの音を聞くたびに……」


「警戒します」


 食い気味で答えるフローラ。うん、流石に察しがいいな。


「うむ、その通りだ。これは『場所』でも同じことが起こる。だから、体にここは寝る場所なんだとしっかり教え込むんだ」


「……わかりました。とにかく、やってみますね」


 まぁこれの効果はやってみないとわからないからな。このリアクションもやむなしだ。フローラはさっきから手に持った木の実を観察している。小説に活かすつもりなのかもしれないな。


「さて、フローラ。実は明日は街に出かけようと思う。連れて行きたいお店があるんだ」


「え……街、ですか……」


 気乗りしない様子だ。気持ちはわかる。いつもの生活圏から出るというのは勇気がいることだ。正直、断られる可能性の方が高いとみている。その代わりのプランもなくはないが……どうなるか。


「……わかりました。支度して待っています」


「いいのかい?」


 これは嬉しい誤算だ。でも、どうして。


「あなたから言ったんじゃありませんか。……まぁ、正直気は進みませんけど、またなにか狙いがあるんでしょうから、と思っただけです」


 そう言って横目でこちらをチラッと見て微笑むフローラ。風になびく銀の髪を、ブレスレットをつけた方の手で押さえている。うーん、絵画のような光景だ。この世界にカメラがないことが悔やまれるぜ。


 などと考えていると、やはりその邪な視線に気付かれ、半歩ほど距離を置かれてしまった。だかしょうがない、クラーク・ブラッドフォードは嘘をつけない男だからな。


 さて、明日のためにもう一度準備を確認しておこう。これが終われば、彼女は大きく前進することになる。そうなれば、今回の試合は終了だ。

《参考出典》

・西野精治(2017) 『スタンフォード式最高の睡眠』

・鈴木祐(2018)『最高の体調』

・ショーン・スティーブンソン(2017)『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』


 あとは国立睡眠財団の研究も参考にしましたが、何年のものだったか失念してしまい……わかり次第追記します。


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