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職業(ジョブ)は真っ白! ~魂の器に、聖女を添えて~  作者: Gleditsia
第1章 遭難者になりました
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その結果

前回:ルナとフォルテが仲良しに。


「あの…フォルテ様、探知が終わりました」


 さてこれから説明をしなければ…というタイミングで、目深にフードを被った女性が割り込んで来た。それは、討伐隊で唯一俺が知らない女性・アイラと言う魔術師。

 フォルテに指示されて、あの魔獣を追跡をしていたハズ。それが終わって報告をしに来たのだ。


 だが、割り込んで来た彼女は、やたらと俺をチラチラと見るばかりで、一向に話し出す気配がなかったのだった。


「俺が気になるのか?」


 あまりにも露骨な態度だったので、普通にそう言ったのだが、彼女はプイッとあっちを向いて、更に押し黙ってしまった。

 初対面にして、なんでそんな態度をとられなければいけないのか、俺はよくわかってなかった。でも、フォルテはそれが何かを察したのか、こう彼女に言った。


「大丈夫です、アイラ。この人も関係者で、この件については当事者なのですから」


 間抜けな頭な俺でもよくわかる説明。

 …つまり、アイラは報告をするにも俺がいる事を気にしてしなかっただけらしい。


 それでも少しの間、彼女は躊躇う様子を見せてなかなか話し出す事が無い。

 やっぱり俺が居たら話しづらいのかな、と思って立ち上がろうとした時、ようやく彼女の口が開いた。


「…2つ、報告があります」


 口を開いた瞬間から、雰囲気をガラッと変えて彼女は言う。

 俺も座り直して、その言葉の続きに耳を傾ける。


「残念ながら、私の探知範囲には《指定:Aクラス》の魔獣を見つける事が出来ませんでした」


 表情は見えないが、結構悔しそうに彼女はそう告げる。

 そういう素養がない俺には、彼女の探索範囲がどれ程かはわからない。でも、それ相応に自信があったんじゃないかとは思う。


「そうですか…。これは困りました…」


 これも仕方がない反応だろう。

 フォルテの討伐隊としての立場としては、あの魔獣を野放しにする事になるのだから。

 ……もし生きているならば、だが。


「それと、フォルテ様。正直これは確信が持てない事なんですが……」


「どうしたのですか、アイラ?」


 2つ目の報告に際して、アイラは何故か一気に自信を失くしたように、言葉を言い淀む。


「大丈夫です。私は貴女を信じます。ですから、お願いします」


 フォルテはアイラに向けて、信頼するとキッパリと言った。

 それはけして出任せではなく、間違いなくフォルテの本心だ。その言葉と態度は、リーダーとしての()()。あとは仲間を疑わない、彼女らしさだと思う。


「ありがとうございます、フォルテ様。…2つ目ですが、別の反応を感知しました。ですが、それは突然に消えてしまったのです……」


「? …それは、貴女の探知範囲内から出た、という事ですか?」


「違います! …あ…すみません…。違うんです、それは範囲を広げるうちに、見つけたのです」


 隣のハイドからの情報を元にして、それを説明するとこうなる。


 アイラの使う探知魔法は、どんどんその範囲を広げるタイプのものらしい。

 その範囲が最大になるよりも先に、魔獣とは違う反応が見つかった。…つまり、そこに何かが居たのだ。

 だが、それはずっと探知範囲に居たハズだったのに、いきなり消えた。

 それが、人なのか、別の魔獣なのかまではハイドもわからないらしい。

 ……例え人や魔獣にしても、それは到底信じれる訳がないのも良くわかる。


「アイツと同じような感じか…?」


 それとは別の事だが、俺も同じ状態だった。

 俺の場合、本当にすぐそこに居た魔獣が消えた。だからと言って、同じかは判断出来ないのだが、その()()()()()()()って事の、現実感の無さは、同じだと思う。


「何かはわかりませんが、後でその痕跡も探して見る必要がありますね…。ありがとう、アイラ」


 たったそれだけの情報から、フォルテは次にすべき事も考え出した。アイラの報告と、その労に感謝の言葉を添える。

 また、フォルテはその後に少しアイラに指示を出したようだ。一礼してから後、アイラは馬に乗って街道を駆けて行った。



「さて、クロノさん。次は貴方に聞かなくてはなりません。…『アイツと同じ』とは、何の事でしょう?」


 やっぱりさっきの呟きは聞かれてしまったようだ。

 そうでなくとも、その事は説明するつもりだったが、真剣な表情で言われると気圧されてしまう。

 いざその説明を……しようと思ったのだが、俺も少し迷ってしまう。


「大丈夫。貴方でも信じますから」


 …そう言われても困る。

 大丈夫だってのはわかるけど、気が進まない。一応、説明するにあたっての証拠があるのだが、それがあんまりなものだから。


「言わなくてもわかるだろうけど、アイツってのは《指定:Aクラス(あの魔獣)》だ」


「道中、ルナさんからも聞いてます。それに、関所の兵士からも報告されていますから」


 「それで?」と続ける。流石にきっちりとしている。主目的がそれなのだから、当然とも言えるか。

 そして、これもまた当然わかるだろうけど、説明しないといけない。


「それも消えたんだよ。目の前から突然。……証拠はそれだ。間違いなく居たんだ…」


 それを指差して、少し気分が悪くなる。


 ……それは目の前に広がる、その大きな血溜まり。

 こんなのは何度も見たくはない。それを見て、俺はまだ、あの魔獣は逃げたと思いたい。

 

 

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