連環世界
「ふう」
ようやく達成したように、息を吐いたのは士。
周りに広がるのは、ひたすらな青、青、青。
海である。
彼はその真ん中にぽつんと置かれた孤島に立っていた。
「今度はここか……」
静かにつぶやいた。
彼は再び転移したのである。
それは、彼の服装からも分かる。
深緑のローブ、ボロボロの革靴、黄金に輝くブレスレット。
それらがあらわすものは、おそらく歴戦の証。
彼の風貌は、とてつもなく変わってしまった。
「ここがどこか分かるか」
彼は誰もいない空間に喋りかけた。
「おそらく、海上世界ポセイドンだろう。文字通り、ギリシャ神話の海神をもとに作られた世界だろうな」
声が聞こえた。
どこからともなく。
だが明らかにその声は、士の顔付近から聞こえる。
「なあドゥー、イヤホン以外に変わることはできないのか」
「お前と話すにはこの姿が適切なのだよ」
その声の主は、ドゥーという名のイヤホンであった。
特に変哲の無い、白色のイヤホンだ。
「まだ三つ目の世界なのかぁ……」
「仕方ない。おそらくこれからも旅は続く。士の大好きなミリタスという女を取り返すために」
「好きとかじゃねーよ。単なる恩返しだ」
彼の目的は、そう。
第一の世界で出会った、ミリタスを救うことだ。
そして現在彼らは、第三の世界にいる。
「それに、俺が本当にやりたいのは、ミリタスをさらった怪物を倒すことだ。奴はどうやら、この連環世界における四天王らしいからな」
「ふん、勝手にせい」
連環世界、それは無限を意味する。
終わりがあるのか分からない、そしてそれぞれが個性を持った、特殊な異世界たちだ。
無論、士がいた世界も含まれているだろう。
そして彼の本当の目的は、この連環世界に存在する四天王の一人、ミリタスをさらった怪物を斃す事。
彼は、闘志にたぎっているのだ。
第一の世界で彼は、戦いに目覚めていた。
どんな世界でも、そこにある能力を吸収し、どんどん強くなる。
それが彼なりの四天王までの道のりだ。
「なあ士、本当に武器捨ててよかったのか?」
「いいんだ。俺はその世界の能力を吸収する。他の世界で使った武器なんぞ使っても意味がない」
「ふん。面白い」
士は第二の世界にて、武器をすべて捨てたらしい。
手持無沙汰で当てもない。
「なあ、どうするんだ」
ドゥーが士に問う。
「とりあえず、この孤島から抜け出さなければいけない。とはいっても、手持ちがないもんな……」
少し後悔した面持ちだ。
「待つか。人が来るのを」
「それしかないがな」
ドゥーは苦笑いを交え言った。
およそ一時間がたった。
「腹減ったなー」
士がため息交じりに言う。
「我慢しろ」
ドゥーが冷たく流す。
「冷たいなー……ん、あそこになんか見えないか」
士はそれを凝視する。
そして彼は気づいた。
「船だ」
「ふうぅー。意外とすぐ来たな」
喜びが感じられる来船だ。
それは徐々に近づいてくる。
どうやら士らに気付いているようだ。
だが、近づくたびにだんだん士は気づいた。
剣戟を現す二つの片刃の鉄剣。
それが帆にとても象徴されて描かれている。
そう、海賊船である。
「おいおい。この世界は大航海時代でも迎えてるのかよ」
「まあ、当然だろうな。この世界は9割以上が海だから」
「そりゃ、そうだよなぁ……」
「士、どうするんだ」
ドゥーが余裕そうな声で問う。
「もちろん、乗っ取る!」
彼は元気そうに、高らかに、気分を上げたように叫んだ。
久しぶりなので、文章力とかストーリとかつまらなくなっているかもしれませんが、どうぞ大目に見てください。